校長ブログ

日本の高校生の数学力

2023.08.15 教科研究
8月15

 世界中の高校生らが競う「国際数学オリンピック」の開会式が千葉で行われました。この大会は1959年にルーマニアで始まったもの。日本での開催は20年ぶり2度目であり、過去最多を記録。約110の国・地域から約600人が参加、日本は高校生6人が出場しました。出題は主に高校までに学ぶ範囲からであり、代数や幾何、数論など、制限時間4時間半で3問、2日で計6問です。今回、日本は112ヵ国中6位、6名全員がメダルを獲得(金2名、銀3名、銅1名)する素晴らしい結果です。

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 数学の重要性が再認識される中、これまでの結果を見ると、日本ではトップ層が伸び悩んでいるとのこと。歴史をひもとくと、日本の初参加が1990年であり、以来、2009年の2位が最高であり、その後、10位前後が続いています。上位は米国、中国、ロシア、韓国などが占め、中国は2019年から4年連続1位です。

 日本の場合、小中学生が好成績。OECD(経済協力開発機構)が実施するPISA(学習到達度調査)は15歳を対象にしたものですが、2018年度は1位です。小中学生を対象とする国際学力テストでは2019年度は小45位、中24位と健闘しています。

 しかし、世界中の英才が競う「国際数学オリンピック」での伸び悩みが浮き彫りになっている以上、数学教育の見直しが求められるのは当然のこと。これは研究の分野にも如実に反映しています。文科省の科学技術・学術政策研究所によれは、2018年の数学の論文数は中国、米国、インドが上位を占め、日本は9位。2000年の6位からランクを下げ、成長する中国やインドとは対照的な結果となっています。

 AIの進展に伴い、産業の基盤領域となる数学は必須であり、経産省の報告書(2019)には、デジタル時代に欠かすことのできない科学としての位置づけが強調されています。伸び悩み解消に向けて、高校数学の教科指導の見直しは必至。これまでの日本の制度設計では、大学受験を意識し、高2段階から文理系に分け、私大文系に進めば数学をあまり学習しなくても進路選択ができ、卒業できるシステムとなっています。  

 母集団を増やすためには、女子の理数枠を増やす必要があります。OECD(2019)によると、日本は大学などのSTEM分野の卒業生のうち女性の割合が17%と加盟国中で最下位。「国際数学オリンピック」に出場した女子もわずか2人しかいません。すでに、大学入試を見直すアクションが始められています。中央教育審議会は、大学の授業で必要な科目は入試でも課すよう求める指針をまとめ、理工系では入試での「女子枠」導入を推進しています。