校長ブログ
近年の大学入試事情
2023.08.12
大学進学研究
8月12日
18歳人口の減少で大学入試の倍率が低下しています。この傾向は私立大のみならず、国公立大でも同様。競争緩和は予想以上に進んでおり、2024年度は加速する見込みだとか。そのような中、2025年度入試について、「総合成績が著しく低い者は、募集人員に満たない場合でも不合格とすることがある」という告知を出した大阪大学の例もあるくらいです。
今や、志願者が募集人員を下回る事態を視野に入れるほど少子化の影響は厳しくなっています。私立大学は年内に合格者を内定する総合型選抜や学校推薦型選抜を拡げていますが、年内入試はほぼ1倍台。国立大も後期では実質1倍強の大学があり、二次募集が増えています。もはや受験対策の動機づけにはならず、高大接続のあり方を検討しなければなりません。18歳人口が205万人と最多であった1992年頃と比べると、国公私立全体が入りやすくなっているのです。
大手予備校によれば、一般入試における首都圏の私立大の半数は平均倍率が2倍未満、国公立大は3倍を超えているものの、地方では2倍台前半とのこと。当然、学力の二極化は進みます。そうすると、年内入試で合格した生徒は勉強しなくなる可能性があり、初年次教育を充実させ、2年目以降の学修に必要な力をつけることが不可欠となります。志願者を過去10年間で見ると、東京大や京都大などの難関10大学が3%減であるのに対し、その他の大学は14%減。その意味で、入試が難しいと考える保護者のイメージと生徒の環境ギャップが指摘されています。
2023年度入試では、理・農学部や医歯薬・保健系学部の志願者が増えましたが、女子の動向に変化が見られます。これまで集まっていた人文、社会、生活科学系統の志願者が減り、理系を希望する女子が増加したのは理系人材育成を標榜する国の方向性とも一致するものです。また、コロナ禍での先行きの不透明さも重なり、就職の有利さを優先した結果、理系が増える可能性が濃厚。理系に女子枠を設ける大学が増えたり、文理融合型の出題形式をとる大学が現れ始めたことも背景にあります。いずれにせよ、学部学科選びでも文理の壁は薄れ、ボーダーレスとなっているのです。
私大を考える生徒の大学入学共通テスト離れが進んでいます。河合塾によると、2020年の大学入試センター試験の時と比べ、受験者全体は10.1%減、受験科目が3科目以下の受験者は16.5%減とのこと。オーソドックスな設問であり、一部の科目利用も可能であったセンター試験に対し、データや資料の読み取りに重点を置く共通テストは独自色が強いため、私大を本命とする生徒が受験するメリットは少ないということもあります。
確かに、共通テストの実施を高3の1月から12月に前倒しする議論もなされています。2月1日から一般入試が始まる私大が利用しやすくなることも考えられますが、それ以上に大きなメリットが見出せるかどうかはわかりません。逆に、前倒しするなら出題範囲を短縮したり、教科をしぼるなどの工夫をしないと年内入試と共通テストの準備を並行して進める高校生の負担も大きすぎるという問題も残ってしまうのです。