校長ブログ
女性の工学系進学
2023.07.31
大学進学研究
7月31日
日本の大学では工学系統の学部に進学する女性は少ないのが現状です。トップの山形県でも2割を超える程度だとか。新たな産業が創出され、イノベーションを起こすためには多様な人財の活躍や独創性が不可欠です。技術者や研究者が増加すれば、地域産業の活性化にもつながることは言うまでもありません。今、各地で女性の工学系進学を後押しする機運が高まっています。
「学校基本調査」(文科省2021)をベースにした調査では、工学系学部のある大学に進学した高校生のうち女性の割合が高かったのは上述の山形県であり、続いて、東京都、岩手県、熊本県となっており、全体では15.2%。首位の山形県は有機ELなどの先端産業の振興を掲げ、地元産業とも連携して女性の活躍の場を広げるために、産官学で人材育成を図ることを構想しています。
OECDの調査(2019)によれば、STEM(科学・技術・工学・数学)分野での卒業生のうち、日本人女性の割合は17%であり、加盟国最下位。(兵庫県は6位で17.3%)平均は32%ですが、ポーランドや英国は40%を超えていますから、いかに工学系の女性比率が低いのかということがわかります。
山形大学は、大学に科学教育の拠点を設け、県内の小中学生向けにイベントを企画するだけでなく、「ヤマガタステムアカデミー」という講座を開講、AIやプログラミングはじめ、様々な体験活動を企画しています。科学館など、環境が整っている都会と比べ、そのような場面が限られる地方での温度差を埋める取り組みが成果となっているというわけです。
また、女性教員や大学院生を県内の中学や高校に派遣し、積極的に出前講義や進路相談を行っています。理数系に興味のある高校生にとっては絶好の機会。結果、大学のオープンキャンパスへの参加者数や研究室訪問する女子生徒も増えているそうです。
4位の熊本県は、半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造の工場建設が進み、その分野の女性の活躍が求められています。熊本大学では「情報融合学環」を2024年に創設し、学校推薦型選抜15名のうち8名を「女子枠」にするそうです。工学部の入試における女子枠と言えば、名古屋大学などがすでに導入しており、工学分野に女性の視点を取り入れ、社会で活躍できる土壌を作っています。今、産官学で女性の理工系進学を促すプロジェクトがトレンドとなっているのです。