校長ブログ
研究の国際化と留学
2023.07.25
グローバル教育
7月25日
スイスは人口800万人ほどの国ですが、科学大国と言われるくらい研究分野が進んでいます。例えば、チューリヒ大は日本語に堪能なシュワルツェネッガー副学長の下、京都大、東京大などと連携して研究を進めています。同大は、レントゲン、シュレーディンガー、アインシュタインなど、ノーベル賞受賞者が外国出身者が多いことでも有名です。
植物の新種形成を研究する同大学の清水健太郎教授は、大学の強みとして、生物、医学、情報、言語など、様々な分野の研究者が学際研究を進めていることや研究室に長く在籍した日本人が現在、日本の大学や国立研究所で活躍していることを述べられています。同時に、日本の大学の国際共同研究での存在感が低下していることも懸念されています。
そして、世界のパンコムギ10品種のゲノムを解読するプロジェクトにおいて、日本の品種が含まれていなかった点を例示し、アジアから国際研究プロジェクトに参加できる国は日本だけでなくなったと述べられています。国際化を進める上で、留学生・研究者数の停滞について、海外留学が就職に生きることを経験者がもっと発信する必要があると言われています。
人口が少なく、人的資源に限りがあるスイスでは、大学を国際化・英語化することによって、世界から人を集めるシステムを構築しています。同大は国際化に対応するために、学内の会議はドイツ語から英語に変えたそうです。他方、フランス、イタリア、日本などは人口が比較的多く、スイスより大きな母集団となっていますが、人材の流動化が加速しているという事実もあります。
日本では、学生や研究員を大規模に海外に送る「国際先導」というプログラム(日本学術振興会)がスタート。植物学の分野では、チューリヒ大が受け皿となる提案が採択されていますが、清水氏は日本の学生のレベルの高さを評価され、このような相互交流が日本の研究の国際化に寄与することを期待されています。人口規模の大きい国からの人の流動化が進む中、日本の大学が抱える課題を浮き彫りにし、対策を講じることは私立中高経営においてもヒントになるものです。