校長ブログ
数式の魅力
2023.06.28
教科研究
6月28日
人間の生命を支えているものが遺伝子やタンパク質、細胞など。それが互いに連携して生命の源を形成しているのです。近年、数学を使って、連携する反応を単純な式に置き換え、様々な現象を探る研究が活発になってきているようです。
合原一幸氏(東京大学特別教授)らは、病気を数式で定義できるようにし、発症前の段階から予防する新たな治療法の開発をめざしています。現在、2050年までに早期に疾患の予測・予防をすることができるプロジェクトに挑まれているとのこと。具体的には、メタボ(メタボリックシンドローム)の予防に向けて、遺伝子の活動状態の変化に着目し、これらを数値化、発症前の状態を判定できるようにするそうです。
数学を応用して生命を研究する分野を数理生物学と言います。その方法には、生物から集めたデータを駆使して数式を作るものと理論に基づき数式を組み立てるものがあるとのこと。合原氏らの方法は前者であり、機械学習で発展を遂げているAIとの相性がよいそうです。木村幸太郎氏(名古屋市立大学教授)らも同様の方法で、行動が単純で、すべての遺伝子が解読されている線虫を対象に、その神経活動を実験と数学を組み合わせた手法で分析し、その行動を数式で示しています。
一方、理論に基づき数式を組み立てるものとして、望月敦史氏(京都大学教授)らの研究があります。これはグラフ理論をもとに、様々な遺伝子がネットワークとして働く仕組みの解明をめざすもの。共同研究では、ホヤが表皮などの組織を作っていくときに働く遺伝子の探索にこの理論を応用、表皮や神経など6つの組織ができることを突き止めています。
数学が生命科学に応用される時代が到来したことは自明ですが、改めて、数学を学習する意味を考えさせられる事例となっています。