校長ブログ
AI時代の英語学習
2023.06.16
グローバル教育
6月16日
チャットGPTをはじめとする生成AIは世の中の仕事に大きな影響を与えると言われています。今のところ、チャットGPTはまだ完全ではないものの、和訳や英訳の精度はかなり高いとのこと。いずれにせよ、技術革新によって、英語学習や入試の目的が再度、問いかけられることになったのです。
ニューヨーク大学経営大学院のシーマンズ准教授らは生成AIが職業にどのような影響を与えるかを研究し、大学では、国語教師(英語学、英文学)が2位、外国語教師が3位、歴史学、法学、哲学などの人文系がそれに続くとしています。金丸敏幸氏(京都大学准教授)は、生成AIの発達に伴う英語学習の根本的な見直しを説き、米国では国語教師が影響を受けるとされていますが、日本では外国語、つまり英語教師がそれに相当すると述べられています。
英語を学ぶ目的は様々ですが、高校生なら大学入試、社会人ならビジネスが大半を占めます。いずれによ、英語に接する機会は多いはずです。ただし、生成AIの進展により、レベルの高い自動翻訳が出現すれば、自力で英語を学ぶ必要性を感じる人が少なくなってくるのもまた事実。当然、なぜ英語を学ぶのかという疑問が生まれ、英語学習そのものが問われることになるわけです。
大学に入学すると、文系理系を問わず、大学生はほぼ全員が英語必修。文学など、英語の深い理解が必要な分野を除いては「使える」英語の習得にシフトしてします。また、学年が進行するのと同時に、ライティング・スキルなど、表現力も求められます。
大学で履修する英語は通例、8~16単位ですが、時間に換算すると360~720時間。仮に、AIを活用して英語を扱うにしても出力されたものが正しいかどうか見極めるには語彙力や基本的な文法力が要ることは確かです。その意味で、AIを使いこなせる英語力があるなど、一定水準のクリアを入学要件にすれば、入試で点数を競う必要もなくなります。また、受験勉強という一律的な英語教育からも解放され、学習の負担は大きく軽減されます。つまり、生成AIの出現によって、これまで英語に充てていた時間を他の学習に回すことができるのです。
国際化が進む昨今、真のグローバル・リーダーを育成するには幅広い教養に裏打ちされた聞き手の魂を動かす英語力が求められます。知識は言葉を通じて鍛えられ、言葉があるからこそコミュニケーションが成立し、知的活動を通じた対人関係が可能になるのです。日本は「英語が使える日本人」の育成をめざしてきましたが、今こそ、英語教育のあるべき姿について再検討しなければならないのです。