校長ブログ
歴史の営みを考える
2023.06.14
カリキュラム・マネジメント
6月14日
コロナ禍における世界全体での危機意識の高まりとともに、人類という視点からのアプローチが増えてきました。ここ数年、人類と文明に関する書物に人気が集まっていましたが、人類の起源をたどるDNA技術がノーベル生理学・医学賞を受賞したことが注目度をさらに高めた感があります。コロナ禍は、科学技術の過信を戒め、改めて、人間の弱みや負の部分を考えさせてくれました。だからこそ、危機を乗り越え、再生に向けてどのようにやり直せばよいかというヒントを与えてくれたとも言えるのです。
現在、世界中には最適解・納得解がまだ見つからない難題が山積しており、人類はどこからきたのか、そしてその歩みは正しかったのか、種の起源にさかのぼって考えざる得ない局面に至っています。山極寿一氏(総合地球環境学研究所長)は、世界全体で気候変動に始まる環境破壊に対する取り組みを進めてきたにも関わらず、未だ紛争や戦争、病気や飢餓が克服できない現状にあり、ホモ・サピエンスという種の行く末を懸念されています。
確かに、約700万年前、アフリカ大陸の熱帯雨林で生を受けた人間は弱い存在であったにもかかわらず、科学技術を通じて進化を遂げてきました。しかし、地上を支配したかのような錯覚に陥り、地球の環境を変えてしまったことは自明です。その意味で、過去を振り返り、未来の"あるべき姿"を考え直さなければならなくなっているのです。
そのためには、人類の進化が文明の力で自然環境に適応してきた歴史を再確認することが大切。道具を使い、日常生活を確立し、共感力を育み、共同体を作った時の刻みをひもとくことがそのファーストステップとなるのです。上述の山極氏らは、環境問題の根幹が人間の文化を捉え、先端技術と伝統的なものを融合して、地球にやさしい低コストの暮らしを実現する研究を進められているそうです。
しかし、いつの時代も教育こそがその原点にあることは言うまでもありません。教育現場が担うべき役割として、人類がこれまで創り上げてきた文化や歴史、哲学を背景知識とできる環境づくりが不可欠です。本校では、中高時代から産官学協働を通して社会や世界とつながる仕組みを築き、先端的な知を鳥瞰的に学び、将来、実現するかもしれない多様な暮らしや社会を柔軟に考え、判断し、表現できる教育実践を目標としています。それが若者の未来を切り拓く試金石になるのではないでしょうか?