校長ブログ

テクノロジーの進化に対応するのは思考力

2023.06.13 EdTech教育
6月13

 昨年公開されたチャットGPT が注目の的になり、世界中の利用者は2カ月で1億人を超えたと言われています。普及が進めば生産性が向上し、GDPが上昇するという予測がある一方、偽情報の生成やサイバー犯罪への悪用を危惧し、規制の必要を求める声があるのも事実。「諸刃の剣」になっている感は否めません。

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 コーネル大によると、7千人を超える州議会議員にAIと人間が書いたメールを両方送り、見分けがつくかどうか調べた結果、区別できなかったそうです。その意味で、科学技術の発展は称賛するものの、高性能AIが民意を述べるレベルにまで至ったとしたら、民主主義の前提が崩れる危機感さえ生じてきます。

 『サピエンス全史』の著者である歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、ホモ・サピエンスが地上の覇者となった理由として、「比類なき言語」を挙げています。今やAIの発達は予想をはるかに超え、人類が築きあげてきた文明に足を踏み入れた感があります。チャットGPTがその典型。当然、高評価と裏腹に警戒感も高まっており、欧州委員会は、秩序を揺るがす存在としてその影響を注視しています。

 一方で、ゴールドマン・サックス(米)は、生成AIの普及が進み、生産性が向上、世界のGDPを7%押し上げると予測しています。実際、チャットGPTは報告書などの作成を効率化させ、米司法試験の模擬試験で上位10%に入る知的水準を示しているとか。

 AI研究で有名なマイケル・オズボーン氏(オックスフォード大教授)は、テクノロジーが人間のありようを変えてきたように、AIについても産業革命で機械化が進み、経済成長につながったのと同様の可能性を指摘しています。インディアナ大(米)は、126の専門職のうち開業医やマーケティング専門家、翻訳者など75%に相当する95職種はチャットGPTにより多くの業務が代替されることを想定し、知的労働で雇用の減少を想定しています。

 高度な知能をもつAIが登場し、進化するにつれて、人類の真価が問われるのは必至。AIが人間を凌ぐ高度な言語能力を獲得しようとしている今、求められるのは幅広い知的作業を担い始めるテクノロジーとどう向き合うかということ。いつの時代も変化に対応してきたのは人間の思考力であったことも史実が示しています。