校長ブログ
生成AIの光と影
2023.06.29
EdTech教育
6月29日
チャットGPTの進化に伴い、生成AIへの期待と警戒感が相まっています。人間の意思決定にも影響を及ぼす可能性があるだけに、人類はどう向き合うべきかが問われています。
グレン・ワイル氏(マイクロソフト研究主任)は、過去と未来を対比的に説明しています。近代的な国民国家は単純なシステムで、画一的な社会が築かれてきたのに対し、生成AIは人類をより生産的にし、あらゆる能力を活用する可能性があると述べられています。しかし、人間が取り組んでいる仕事がより安価に自動化され、少数が主導するやり方では経済機会の多くが失われることになり、取り残された人々の潜在能力をすべて活用することは難しいことも指摘されています。
その上にで、AIにどのような制限をかけるべきか、そして、開発すべき補完的な技術は何かを考えることが大切と述べられています。生成AIについては、テクノロジー形成に向けた公共投資に注力すべきこと、政府の役割として事後的な対応だけでなく、先を見越した開発にも目を向けることの重要性を言及されています。そのためには、政府や社会の様々なセクターが、技術開発に積極的に関与し、何かが変わるかもしれないという希望や可能性を感じることが求められます。
山本龍彦氏(慶応大法科大学院教授)は、情報を集めた上で、総合的に判断して結論を出す生成AIが民主主義における自己決定という原理原則が揺るがしかねないことも含めて、社会全体の意思決定のあり方を根本的に変える可能性があることを示唆しています。
AI社会における人間の自己決定権確保に向けて、米国は「AI権利章典」の草案を公表しています。EUは「基本権憲章」で基本権がデジタル社会でも保護されるよう「デジタルの権利と原則に関する宣言」を定めています。そして、AIの具体的長用途とリスク管理を定める「AI法」案を検討しています。日本でもガイドライン策定に向けての動きが加速しています。
チャットGPTが公開されたのは昨年末。まずか半年の間に世界の利用者は1億人を超え、人間とAIの対話はありふれたものになっています。生成AIは生産性向上などが期待される一方、偽情報や偏見、サイバー犯罪といった弊害が懸念されています。いずれにせよ、生成AIとの向き合い方が未来を分ける分水嶺になることは疑う余地がありません。