校長ブログ
生成AIによる仕事の変化
2023.06.26
トレンド情報
6月26日
オックスフォード大学のカール・フレイ氏とマイケル・オズボーン氏が、米国でAIが4割以上の仕事に取って代わるという予想を発表したのが2013年。金融大手ゴールドマン・サックスのように、ピーク時には600人いたトレーダーが2人になったところもあれば、マーケッターやトレーダー用のソフト開発といった分野のように採用が増加しているところもあります。技術やビジネスの変化に応じて、仕事のあり様も変わってきているというわけです。
中川裕志氏(理化学研究所チームリーダー)は、チャットGPTなどの生成AIが人間の仕事を代替するのかという問題について、膨大な言語データは関連する文を切り貼りし、回答をつくれるものの、これは言語情報処理にすぎず、文脈をすべカバーできるかどうかは疑問であることを指摘されています。つまり、正確な知識で目的に応じて内容を正しく吟味することが必要なのです。
生成AIはインターネット上に表現された言語情報を学習することによって、巨大コミュニティー並の知識を獲得していきます。しかし、それは人間のように文書を理解しているのではなく、ビッグデータから語彙の関係を捉えるトランスフォーマーと呼ばれる深層学習によって質問に対して関連する文書を組み合わせ、回答を生み出しているだけなのです。一方で、データが大きくなればなるほど良質の回答が導かれると期待されています。結果、チャットGPTのような性能が生み出されたわけです。
生成AIを活用した最適解に向けて、ニュースの記事やインターネットに接続されていない非公開データを取り込むことができれば、時代の要請に対応した回答をつくれるはずです。最近では、セキュリティに配慮しつつ、会社内に生成AIを置き、より的確な回答を求めて公開生成AIに質問、その答を社内生成AIに与えて回答を導き出すという着想が生まれています。このようなハイブリッド型の生成AIが誕生すれば、大半の文書処理が自動化で、ごく少数の人数で対応できるようになるのです。
ただし、人間の知性が脳の中だけにあるのではなく、脳以外の身体感覚が統合して生まれるという考え方や身体性に加え、他人とのコミュニケーションの中に知性が存在するという考え方もあります。同時に、斬新なアイデアを出せない人が活躍できる場所がなくなるかもしれません。倫理的な問題を含め、まだまだ克服しなければならない課題があるのが現状です。