校長ブログ

科学研究とは真実を追い求めること

2023.05.19 教科研究
5月19

 約2億年にわたり、地球を支配してきた恐竜の実像が明らかになりつつあります。SF作品で見るように空を飛んだり、猛スピードで走る恐竜とはほど遠い、不器用で鈍重だった存在であったとのこと、これまでの常識を覆すエピソードです。

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 例えば、映画に出てくる翼竜は航空機を襲い墜落させる怪獣そのもののイメージですが、後藤佑介氏(名古屋大学准教授)らは、上昇気流などを捉えて滑空飛行するのが苦手であり、普段は陸を歩き、肉食恐竜に襲われた時だけ短距離を飛んで逃げたのが実態であり、数分飛ぶのが限度という興味深い発表をされています。

 恐竜が空を飛ぶという幻想は体重の誤解に端を発しているようです。これまで骨の内部が空洞なことから体重は人間並みの70キログラムとされていましたが、最新の計算法を使うと250キログラムが推定されたとのこと。誤解の背景は、飛べることを前提にしているため、体重を軽めに見たこと、そして、大型翼竜のプテラノドンが高い飛行能力をもっていたことによる先入観のようです。

 化石の発掘やコンピューター上で計算モデルを作り、確からしい答を導いていく最新技術の進展によって、これまでの常識が覆ろうとしているのです。史上最強の恐竜であるティラノサウルスで言えば、かつては時速約70キロメートルで駆けたと言われていましたが、マンチェスター大学の研究によれば、走れたとしても非常にゆっくり、高速で走れば脚の骨が重みで折れると分析されています。また、約4万年前に絶滅したネアンデルタール人は、19世紀の発見直後には原始的な人類とされていましたが、現在では、現代人と同じ大きさの脳をもち、仲間を悼んで埋葬したと考えられています。

 真実を追い求める科学研究は修正を繰り返しながら発展してきました。恐竜と言えば、SF作品での登場もあり、これまで完璧な生物であり、地上に長く君臨してきたというイメージを与え、人間を魅了してきましたのと同時に、様々な誤解を招いてきたこともまた事実。しかし、人類の英知の結集が未知の魅力を発見しているという史実もあるのです。