校長ブログ
大学入試問題の多様性
2023.05.16
大学進学研究
5月16日
「最近、受験しようと思う大学で総合問題が出題されるが、どのような勉強をすればよいですか」という質問を受けることが増えました。
総合問題とは、教科横断型であり、いわば探究的なもの。難関と言われる大学ほど導入する傾向が強くなっています。例えば、早稲田大では、2022年度から導入した政治経済学部に続き、2025年度から社会科学部も総合問題を出題することになっています。この流れは、大学入試改革に呼応し、旧来の入試に見られたような知識偏重型からの脱却を図るもの。まさに新学習指導要領に謳われた内容の具現化と言えます。
テーマは、文学作品ではなく、時事的トピック、つまり、SDGsや少子高齢化といった大学1〜2年生で扱う題材が圧倒的。そして、それまでに蓄積した知識を総動員して思考➡︎判断➡︎表現する力が求められています。しかし、こういった傾向は決して目新しいものではなく、難関と呼ばれる大学ではごく当然、かつ、「良問」と評されてきた問題にすぎません。近年では学際領域と言われる学部が増加しており、トレンドになっています。
学習指導要領が改定、年次進行で新課程が導入され、高1〜2は上記の内容に探究的要素をちりばめた総合的内容を扱うことになります。入試の出題形式も課題文の読解に加え、統計資料や実験データの分析を求めるものが多くなることは明らかですが、幅広いテーマに対する背景知識を増やし、正確のない問題に対して最適解・納得解を導く練習が必要なのです。
大学入試のいわゆる総合問題を鳥瞰すると、傾向は千差万別。上記のようにハイレベルのところもあれば、従来の小論文に近いところもあります。温度差がある分、対策が立てにくいのが現状ですが、入試問題はその大学が取りたい学生を映し出す鏡とも言えるものですから過去問を研究した上で、志望する専攻分野に近い教科担当の先生に助言を求めてほしいと思います。
教科試験でも似た傾向があります。例えば、大学入学共通テストの英語では大学入試センター試験に比べ英文量が増え、資料や広告文を読み取るなど情報処理能力が求められました。京都大学では読解問題が全て英文和訳になりました。(校長ブログ2023.5.4)早稲田大学国際教養学部では、ミルの「自由論」が出題されました。学部学科に国際を冠する大学では、どちらかというとメディア英語で扱われるような題材が多いだけに異例です。対策が立てにくいという声が聞こえてきそうですが、大学に入学し、専門分野に踏み込むと、英文を速読することも精読することも日常茶飯事。変化が激しい時代、大学からのメッセージを読み取ってほしいものです。