校長ブログ
食資源
2023.05.10
トレンド情報
5月10日
世界では人口の増加に伴い、食文化が多様化しています。そのような中、日本ではこれまであまり作られていなかった農作物や水産物を根付かせ、食資源を確保する動きが出てきました。
例えば、養殖サーモン。世界消費のうち大半をチリとノルウェー産が占めると言われています。ロシアのウクライナ侵攻で国際相場が高騰しましたが、日本の企業はいち早く陸上養殖に取り組みました。
埼玉のFRDジャパンのCoCEO(共同経営者)である十河哲朗さんは、大手総合商社からの転身組。兵庫県に育ち、子供の頃の趣味は釣りでした。魚類学者をめざし、京都大学農学部に進学し、そこでビジネスと環境保全の両立を目指す環境ビジネスの存在を知り、そちらの方面に力を入れる三井物産に就職します。社内で様々な経験を積み、水産事業室へ。そこでサーモン事業を担当しますが、養殖は世界の水産資源への負担は少ない利点があるものの、養殖池が集中すると海が疲弊し、魚をつくれなくなるかもしれないことを肌で感じることに。しかし、海洋の負担が少ない方法で養殖し、国産化することができれば、輸入物よりも買いやすい価格で、輸送コストも最低限に抑えたサーモンを流通させられるという発想に至ります。
FRDジャパンは、ある自治体からアワビの陸上養殖をもちかけられ、海がない埼玉県で養殖事業を模索していました。そして、それをサーモンに応用、想定を超える結果に三井物産からの投資を実現、実証実験を開始します。その中に十河さんもいたというわけです。改善を重ね、5年で23世代のサーモンが成長、年間生産量は30トンですが、今後は3000トン規模に拡大する予定だとか...。
今、各地では水産の陸上養殖施設が続々と立ち上がっています。十河さんは、魚の暮らす環境を陸上に再現して、新たな魚種を養殖できないかなど、さらなる挑戦に挑むようです。興味・関心の対象をもつことの意義を教えてくれる好個な事例です。