校長ブログ
生命の起源
2023.04.27
トレンド情報
4月27日
はやぶさ2(探索機)がりゅうぐう(小惑星)で採取したサンプルを分析し、生命の起源を担うRNA(リボ核酸)の原料を発見しました。これにより隕石(いんせき)などで地球に運ばれ、地上の物質とともに生命誕生に役立った可能性があることが明らかにされました。いわゆる宇宙からの飛来説です。宇宙で採取したサンプルでの確認はこれが初めてですが、その内容は科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(英)に掲載されています。地球の生命の起源はいまだ謎に包まれていますが、RNAが関与するという説があり、地上でも塩基を合成する化学反応が生じ、それが生命誕生につながったと考えられています。
遺伝情報を担う物質にはRNAやDNAがありますが、RNAは生命の遺伝情報を伝える物質であり、4種類の塩基と呼ばれる物質から構成されています。すでに隕石から確認されており、地上で混入した可能性が想定されています。今回、北海道大学や海洋研究開発機構などの研究チームがサンプルを分析、RNAのみに含まれる塩基の一種であるウラシルを検出しました。結果、りゅうぐうの母天体の中で水や鉱物、その他の分子が化学反応を起こして生じたものと見なされており、一部は太陽系が誕生する前の物質も含まれていたことが示唆されています。宇宙でも光や熱などの条件がそろえば、生命の源となる物質が宇宙でも合成され、地球へ届けられたと考えることができるわけです。
研究チームは、母天体には水と鉱物があり、複雑な有機物を合成する化学反応が起こりやすい環境であることから、ウラシルはりゅうぐうの母天体で作られたという説を立てています。検出したウラシルの一部は太陽系が誕生する以前に合成されたものもあったとのこと。RNAやDNAを作る塩基は隕石からすでに見つかっていますが、今回の結果をふまえると、宇宙空間で作られた塩基が隕石などで地球に到達したということになります。
化学反応を促し、自ら複製する能力を獲得しやすい性質があるRNAが注目されたのは、生命誕生との関係が指摘されてから。東京大学の鈴木勉氏(東京大学教授)はRNAが生命の起源になった可能性が高いとおっしゃっています。原始の生命は、RNAが膜に包まれた単純な作りであり、DNA、RNA、たんぱく質からなる現在の生物とは異なっていたようです。
塩基は宇宙から飛来するだけでなく、地球上でも合成されるようです。深海には地熱で高温になった水が噴き出し、塩基を合成するエネルギーや原料の水、CO2などがあり、生命の誕生に適する環境になっているようです。今回の分析では他の塩基は見つかっていませんが、さらなるサンプルとして、探査機オシリス・レックス(米)や今年9月には小惑星ベンヌが持ち帰ることが予定されています。生命の起源についての解明される日はそう遠くないのかもしれません。