校長ブログ
情報教育
2023.04.21
教科研究
4月21日
今、多くの大学で情報やデータサイエンスに関する学部・学科が新設されています。また、データサイエンスを必修化する大学も増えています。
政府の「AI戦略2019」には、2025年までにすべての大学生・高専生に基礎知識を修得させ、そのうち半数には応用力まで身につけさせる方向性が示されています。具体的には「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」がスタート。要するに、人文科学、社会科学、自然科学に共通するデータを収集、分析、問題を発見し、それを仮説として示す手法を身につけてさせるということです。
しかし、使い方によっては人間や社会にマイナス要因になる危険性があるのもまた事実。松尾宇泰教氏(東京大学数理・情報教育研究センター教授)は、ELSI(エルシー:倫理的・法的・社会的課題)に配慮し、文系の学問とも連携する必要性を説いています。
大学改革シンポジウム「デジタル人材どう育てる」(2023.1.24 日経)で、白井俊之氏(ニトリホールディングス社長)は、商品開発には様々な情報をデータ化することが不可欠と述べられています。同時に、仮説を立てながらの分析能力や店舗での経験値も不可欠とのこと。実際、数字を多く取り扱う仕事で文系出身者が活躍している事例も多く、理系の学生だけが必ずしも数字に強いというわけではありません。
国内の大学を見わたすと、2024年春、共創工学部を設置するお茶の水女子大学は、文系学生のデータサイエンス教育について、社会人の話や企業の寄付講座を通じて抵抗感をなくす工夫をされています。関西大学は、全学生が受講できるデータサイエンスの科目を開講、多くの教員がリレー形式でレクチャーし、活用法を指導されています。九州工業大学は、産学連携に力を入れ、企業に社会課題を提示してもらい、データサイエンスを駆使して解決策を考える取り組みを試みられています。現在、新入生の約16%が女子学生であり、増加傾向だそうです。
OECDが実施した学習到達度調査(2018)によれば、日本は「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」が高く、女子生徒はよい成績を取っているにもかかわらず、いつの間にか文系に変わってしまうことが指摘されています。理系を志す女性が少ないのは、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)があるからとも言われています。
今や、デジタルを駆使して子育てや介護をしながら仕事ができるようになるなど、人々の暮らし方や生き方が変容しています。それ故、そのツールとなるデータサイエンスをそれぞれの分野に組み合わせるバランス感覚とそれに伴うモラルが求められるのです。多様な人に関わってもらうことが化学反応が起こし、それが新たなデータの発掘につながり、ビッグデータを分析することで文理融合の視点を生み出すのです。コロナ禍でデジタル教材が増えたことで学び直しへの機運も高まり、それがまた企業で評価されるようになってきました。かつての「ものつくり大国」のスピリッツで具体化していきたいものです。
プログラミング検定の動画はこちらからもご覧になれます。