校長ブログ
職業観の変容
2023.04.18
グローバル教育
4月18日
景気の低迷に伴い、日本より労働条件の良い環境を求めて海外に出る日本人が増加しています。OECD(経済協力開発機構)によれば、日本の平均賃金は34カ国中24位であり、G7では最低となっています。
OECDによると、2021年の日本の平均賃金は3万9711ドル(約540万円)であり、30年間ほとんど変わっていませんが、米国の賃金(7万4738ドル)は日本の約1.9倍になり、同じ期間で約1.5倍に増加しています。さらに、韓国(4万2747ドル)は日本を抜いています。
自動車メーカーからスウェーデンのスタートアップ企業のシステムエンジニアに転職したという日本人男性は年収が1.5倍になったそうです。転職のきっかけになったのが欧州出張。そこで、充実したワーク・ライフ・バランスを目の当たりにしたことが決め手になったとか。公用語はスウェーデン語ですが、英語で通じるので言葉の壁もそれほど感じないと言われています。そして、規則正しい生活リズムの中で、家族団らんの時間も確保できているともおっしゃっています。
海外転職の支援をしているGJJ(東京)によれば、円安も影響し、昨年は海外での転職希望は2021年の約1.5倍、年齢層はかつては有名大学を卒業した20代後半~30代前半でしたが、近年では海外駐在経験のある50〜60代も増えたとのこと。日系企業の現地採用などで東南アジアに転職するケースが多いものの、大半が永住目的ではないそうです。
しかし、海外で働く場合、高い報酬を得るには高い専門性が要求され、誰もが通用するわけではありません。規制が厳しい日本に比べ、海外は試用期間が長く、結果が出なければすぐに解雇されるというリスクもあります。また、医療費が高い、水準の高い医療にアクセスしにくい地域もあります。それらを鑑みると、海外転職を考える場合、まずは短期間でも現地で生活してみることが大切であり、十分な下調べが必要であることもまた事実なのです。
最低賃金をベースに日本で働いた場合、自国の何倍の賃金を得られるかを「出稼ぎ魅力度指数」として試算した星野卓也氏(第一生命経済研究所・主任エコノミスト)によれば、発展途上国の経済成長に伴い、日本との賃金差は縮まっており、外国人労働者にとって、日本は魅力的な国とは言えなくなりつつあるようです。優秀な人財が海外に流出し、外国から労働者が集まらなくなっている現状の中、生産性の向上が喫緊の課題であることは言うまでもありません。