校長ブログ

地域に開かれた学校

2023.03.29 カリキュラム・マネジメント
3月29

 学校の役割が再定義されつつある今、社会教育の充実が求められています。学習の主体については老若男女を問わず、生徒や学生から社会人、さらには第一線を引かれた方にまで拡げた学び直しであり、これは地域に開かれた学校づくりにつながる視点です。

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 地域に開かれた学校づくりの歴史は、第2次世界大戦直後、地域社会の担い手として全国各地で行われた青年教育に遡ります。当時、若者は夜間、公民館や学校に集い、サークル活動等を通して、平和で民主的な国づくりをめざし、新しい法制度に関する学びに取り組みました。結果、自主的な学びを重視した共同学習が急速に広がり、地域づくりを推進する場として、また、生き方に関わる問題を語り合う場として機能したのです。

 しかし、高度経済成長期を経て、大学進学率が急上昇、産業構造が変化したことによって参加者は減少していきます。21世紀になると、雇用形態の変化にうまく適応できないニートやフリーターと呼ばれる存在が登場し、キャリア開発支援のための学び直しが定着します。

 現代の若者はITスキルに優れ、SNSを使いこなし、世界中の人とつながり、新しい発想で社会的な課題に挑戦する無限の可能性を秘めているように見えます。しかし、エネルギッシュな活動が展開できる若者がいる一方、溢れんばかりの情報が渦巻く社会の中、不安になり、孤独を感じている若者も少なくないのです。

 さらに、コロナ禍が追い打ちをかけ、バーチャルな空間でしか本音を出せない状況に陥っているからこそ、より一層、若者が集い、異なる意見の人々と議論しながら、地域社会の役に立てるようになることが不可欠となるのです。それが起業や地域課題の解決に向かうプロジェクトにつながる探究学習。例えば、日本青年館では「全国まちづくり若者サミット」として若者会議や地域青年団、大学のサークル、地域のボランティアが集まり、活動を紹介し合ったり、新しい展開のための情報交流を対面とオンラインで実施しています。

 就職しても数年で転職しまう若者が増えている今、リスキリング(学び直し)やリカレント教育が展開されています。社会教育や生涯学習を専門とされ、地域の青年団や女性の学習活動の支援に関わってこられた矢口悦子氏(東洋大学長)は、地域の中で若者が不安や悩みを相談でき、多様な背景や個性を持つ人々が集う学び合える場が必要と言われています。

 政策面でみると、近年は少子化対策と高齢者対策に力を入れてきましたが、若者の居場所づくりに関わる教育が各地で自覚され始めています。若者が根づくには地域産業の改革が必要ですが、同等に、共に生きようとする人々とのつながりが不可欠。生きる喜びやぬくもりを感じ合える地域づくり、持続可能な社会づくりは中学や高校の教育改革にもあてはまることなのです。