校長ブログ

新コース立ち上げ特集㊿-第二言語習得-

2023.03.13 グローバル教育
3月13

 第二言語習得(Second Language Acquisition)とは、文字通り、人がどのように第二言語を学ぶかということですが、言語学、心理学、社会学、神経科学などとも密接に関係しており、長い歴史があります。

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 第二言語習得が注目されたのは、1980年代、スティーヴン・クラッシェンが第二言語の習得は理解できるインプットにのみ行われるという仮説を発表した頃から。1990年代には、インタラクション仮説、アウトプット仮説、 気づきの仮説など、様々な知見が発表されますが、言語学的アプローチと心理学的アプローチの2つの流れが定着していきます。

 言語学の分野ではノーム・チョムスキーの普遍文法 (Universal Grammar)が有名。これは全ての言語の基本的法則は共通であるという考え方に基づくものですが、心理学的過程については扱っていません。クラッシェンのインプット仮説 (Input Hypothesis)の効果は、第二言語の能力のレベルより少し上のインプットを受けた場合としています。また、モニターモデル(Monitor Hypothesis)では、「学習」と「習得」は根本的に異なり、お互いに干渉がなく、インプットが言語習得に不可欠であるとしています。

 ロングは、インタラクション仮説 (Interaction Hypothesis)の中で、学習者は多くのインプットを対話する相手から得ることができると主張しています。そして、コミュニケーション内容が理解できなくても会話を止めてゆっくり話してもらえばインプット処理に時間をかけることができるので「気づき」につながるとしています。スウェインは、1980年代に、アウトプット仮説 (Output Hypothesis)を提唱しています。

 その他、異なる言語の話者が意味を把握するためにどのように文章を分析しているかに基づくという競合モデル(Competition Model)、コンピュータのニューラルネットのモデルを使い、認知処理をモデル化したコネクショニズム (Connectionism)、学習途中の中間言語が対象の言語の文法とは異なることを認識する必要があるとする認識化仮説 (Noticing Hypothesis)、発達段階に応じて知識体系を再構成するという処理可能性 (Processability Theory)、繰り返し練習することで意識しなくても実行できるようする自動化 (Automaticity)、認知科学で行われている記憶の保存と取り出しの区別と矛盾がない一方で、その操作がどのようにされるかを理解する宣言/手順モデル (Declarative/Procedural Model)、記憶との関係等々が世に問われています。本校のスタンスとしては、先達の業績をひもとき、参考になる点を積極的に取り入れ、生徒一人ひとりの真の語学力育成に資する教育を実践するのみです。