校長ブログ

AIの開発と科学の発展

2023.03.30 EdTech教育
3月30

 AIの進歩は日進月歩。すでに大学で課題として出されるリポートが書けるレベルになり、最近では、研究開発に使えるAIを作ろうというところまできているようです。目標は、ニュートンが木から落ちるリンゴを見て万有引力を発見したり、ダーウィンがガラパゴス諸島などを旅して進化論を唱えたりとするいった偉人レベルだとか...

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 AIは脳の神経回路をモデルにした深層学習を駆使しています。以前はデータ量や品質という点でなかなか思うような成果が出ずに苦労していましたが、最近ではかなりの線まできているようです。例えば、囲碁のトップ棋士に勝利した「アルファ碁」で有名になったディープマインド(英)は、2021年には数学者と連携、人間が見逃していた関係式をAIで見つけることに成功しています。また、2022年には80回のかけ算が必要だった行列の計算を76回に減らし、それらの成果をネイチャー誌に発表しています。

 深層学習だけではありません。様々な理論が打ち立てられ、果敢な取り組みが行われています。例えば、「チョコレートの消費量が多い国ほど、人口1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数が多い」という説が発表されて話題になったのが2012年。当時からグラフにすると相関関係はあるように見えるものの、理由ははっきりしませんでした。しかし、隠れた因果関係を見つける「因果推論」という考え方が解明の道筋をつけました。

 科学が発展するときに見られる推論をアブダクション(仮説推論)と言います。哲学者であるチャールズ・サンダース・パース(米)は、海岸線の形などからひらめいたウェゲナーの大陸移動説やワトソンとクリックのDNA2重らせんモデルなどを説明しています。

 AIにこのような推論ができるかどうかは見方が分かれるところです。津田一郎氏(中部大学教授)は、脳と同じような仕組みがあればアブダクションに近い機能をAIに持たせられると考えています。しかし、科学的な文章の執筆を支援するAI「ギャラクティカ」(2022)を公開した米メタが文章に誤りがあるなどの指摘を受け、利用をストップした例もあります。

 失敗は成功の母。科学研究ができるAIの開発は、その過程で幅広い分野の発展につながるはずです。すべてが実現できるわけではありませんが、AIの発展により科学研究のあり方が大きく変わる可能性は高いことは疑う余地がありません。