校長ブログ
新コース立ち上げ特集㊹-ライティング・プロセス
2023.02.09
グローバル教育
2月9日
ライティングを上達させるには、定型表現やコロケーションといった語のまとまりをチャンクとして処理できるようになることが第一歩であり、それが流暢さにつながると言われています。科学技術の発展に伴い、頻度の高い表現がコーパスで検索できるようになったこともまた大きな助けになっています。
ライティングの研究には、実際に「書く」という行為に焦点をあてた研究と頭の中でどのようなメカニズムが働いて思考したことが文章化されていくのかという心的プロセスの研究があります。
後者を例にとれば、Chenoweth and Hayesは、言語産出について、情報量・知識量とも言える資源レベル(resource level)、思考・言語化される処理レベル(process level)、処理間の相互作用を統御する制御レベル(control level)から成るとしています。
処理間の相互作用とは、フリーライティングなら修正しないが、提出するレポートなら修正を加える、あるいは、辞書や資料を活用して文章をブラッシュアップするなど、「書く」内容によってそのアプローチが異なってくるということ。いずれにせよ、外国語としての英語を学ぶ場合、学習者の思考を言語化する過程や修正において認知に負荷がかかりすぎでしまうと停滞すると言われています。
これまでのライティング・プロセスに関する研究と言えば、発話思考法、直接観察、書き手の追観、書かれた作文の分析、ビデオ・モニタリング等のいずれか、あるいは複数の手法を組み合わせるのが一般的でした。しかし、実験的環境によって心的負荷がかかる、自然な産出記録が取れない、データを取りこぼす、主観的判断に陥りやすいなどの課題もありました。近年ではコンピュータ・プログラムに着目したデータ収集を行うなど、様々な工夫が重ねられています。
言語経験が豊富な母語の場合、状況に適する語彙検索や構文産出は容易なはずです。しかし、外国語を学ぶ場合、母語話者と比べると、使用頻度が少ないことは言うまでもありません。よって、思考を言語化していく過程で、文法に基づく処理を行うだけでなく、ストックされた定型表現を活用することによって負担を軽減できるのもまた事実なのです。作文が借文と言われる所以です。