校長ブログ
日本の教育事情②
2023.02.28
トレンド情報
2月28日
With/Afterコロナ時代の中、教育現場には様々な課題があります。今回は昨今の教育事情について。
コロナ禍の課題として、子供の成長期におけるコミュニケーションが希薄になったことが懸念されています。感染リスクがない状態でもマスクを取りたがらない子供がいるとか。学習端末の活用については、教員、学校、地域によって温度差があり、8割の学校がうまく活用できないと指摘する専門家もいるくらいです。
不登校の小中学生が急増し、2021年度には前年よりもさらに約5万人増加し、約24万人。コロナ禍もあいまって、学校に「行かない」と「行けない」という登校規範が崩れかかっている中、デジタル教材等を活用した個別最適化を推進し、「学びの選択」を用意するのが教師の役割と言えます。同時に、「開かれた学校」づくりに向けて、ブラック校則などを見直すことで学校に対する価値観を変えることも必要です。
大学の授業について言えば、時間や場所を選ばなくてもよい非同期型のオンライン学修が定着した感があります。実際、倍速視聴している学生も多く、そのような自己調整が理解度の促進につながっているとも言われています。しかし、一方で、遠隔授業の場合、単位取得が楽と考える学生がいるのではないかという危惧もあります。9割以上の大学が2022年度の後期授業を原則対面とし、質の担保を打ち出しました。遠隔授業に対する大学と学生の意識の間にはまだまだ隔たりがありますが、大学設置基準が変わり、今後、遠隔授業の活用の幅が広がることを考えれば、様々な授業を組み合わせたシラバスが不可欠です。
また、理系入試の女子枠や女性教員の採用増加方針など、ダイバーシティーに関する話題も目立ちます。日本の大学教員の女性比率は、約3割(OECD、2020)と最低水準であり、国際的に遅れている感は否めません。真の実力をもった者が教壇に立ち、研究できる場にシフトしようという試みは大学のレベルアップにつながるはずです。
さらに、国内では優れた教育や研究水準を誇る東京工業大と東京医科歯科大の統合がニュースになりました。マサチューセッツ工科大など、世界のトップクラスの大学はバイオや医工学に強いという現状を鑑みたとき、この統合はグローバル化に対応するものと考えることができます。同時に、10兆円規模の大学ファンドの影響もあります。あまりにも狭い学問領域ではファンドの対象にはなりにくく、医学系の大学院や科学技術に強いMBA(経営学修士)の育成を期待する国の方向性が読み取れます。相乗効果は未知数ですが、人口減少に伴う大学の再編を考えると統合の動きは広がる可能性があります。
小中高の教育現場では、公立の教員不足が深刻化しています。実態調査(2021.5)では欠員が2千人を超え、教職の魅力を現場から発信するという「教師のバトン」という文科省の企画が空転。臨時採用の候補者も枯渇しているとのこと。教員採用試験の早期化など、中央教育審議会は教員の養成・採用・研修を一体で改革する指針を出していますが、教師が子供の成長に関わることができる素晴らしい仕事であることを再認識していただく仕組みづくりが問われているのです。