校長ブログ
教育水準が認知症抑制に影響
2023.02.21
カリキュラム・マネジメント
2月21日
東京大学とスタンフォード大学(米)が認知症は教育水準によって抑えられ、日本は2016年の510万人から2043年には465万人に減るという見解を発表(東大の橋本英樹教授)しました。世界中ですでに5,000万人以上の人が認知症を患い、2050年には1億5,000万人以上、日本でも2040年には900万人を超えると想定されていただけに驚きのニュースとなりました。
調査方法としては、年を重ねるとどのような病気や機能低下が生じるかをコンピュータで調べたところ、60歳以上が暮らす架空の日本で認知症になる人は減っていくとのこと。要因は、日本の高い教育水準と学習歴が健康状態を保つからだそうです。認知症になる割合も、高学歴化に伴い、2043年には男性の場合、大卒以上1.4%、高卒7.7%、高卒未満25.6%、女性の場合、大卒以上15.4%、高卒14.8%、高卒未満24.6であり、学習期間や学びの機会が増える分、認知症も少なくなっていくとか。これは高学歴化が進む米国でも見られる傾向です。
専門家によれば、認知症の抑制と学習の関連については常識的なものになっており、思春期を含む子供の学習期間の短さが高血圧や鬱などと共に危険因子にあがっています。(勿論、学習歴だけがすべてではありませんが...)大半の認知症は、ゴミとなるタンパク質が脳の神経を傷めるのが原因と考えられており、そのリスク回避に向けて生涯学習を通じた学びの価値を再考する時期に来ているのです。
英国の1,000人を超える60年以上に及ぶ研究(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)では、幼少期の認知能力が低いと高齢期の認知能力が下がると考えられています。しかし、それは決定論的なものではなく、中年期の教育や働き方、余暇活動などにも関係あるそうです。
近年の研究では、認知症を防ぐには健康管理だけでなく、教育水準の低い国ではリスクが大きいため、教育制度の見直しが指摘されています。進路選択は本人次第とはいうものの、一人ひとりが社会の中で担う役割を考え、学び直し(recurrent)の姿勢を再構築するだけでなく、内外を問わず、教育格差が問題視される社会の構造改革が認知症を抑制するポイントになっていることもまた事実なのです。