校長ブログ
300人女性教員採用計画
2023.02.13
大学進学研究
2月13日
欧米では女性教員を増やす取り組みが進んでいます。OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、大学などの高等教育機関で働く教員に占める女性の割合は平均45%であり、リトアニア(59%)、フィンランド(53%)、米国(51%)は半数を超えています。ノーベル賞を多く輩出しているマサチューセッツ工科大では、1990年代から女性教員の地位向上を図り、2004年に初の女性学長が誕生しました。
グローバル化が進展する中、特に、イノベーションの分野において、多様性のあるチームが高い成果を残す傾向があることが知られるようになりました。そのような中、東大が6年間で女性教員約300名(教授・准教授)を採用するという計画を打ち出しています。
海外の大学に比べ、日本の大学では女性教員の登用が遅れてきたことは事実ですが、この方向性の背景にあるのは、多様性の確保が進まなければ世界基準の研究競争で後れを取るという判断に他なりません。
日本政策投資銀行によれば、男女混合チームによる特許資産の経済効果は男性だけの場合の約1.5倍になるとのこと。大学においても女性の割合が高いほどより精度の高い研究成果を生み出せるという期待値があるのは当然です。同時に、女性の割合が低いと内外から優秀な女性研究者を呼び込むことが難しくなるとの危機感もあるはずです。
国立大学協会(2021)によれば、全国の国立大86校のうち、女性教員の割合は、お茶の水女子大や東京外大が4割を超える一方、東大は14.3%で72番目。(京都大も13.2%)近年では、東京工大のように、教授や准教授のポストを新設し、8名の「女性限定」にした公募を実施するところも出始めています。
東大の場合、学部や大学院の出身者が教員になっているケースが多く、元々、学部や大学院における女性が少ないことが女性教員の比率が高まらない理由の一つのようです。しかし、海外のトップクラスの大学と比肩するには、約2割の学部生の女性の割合を高め、研究者を目指す層を増やすこと、外部から優秀な女性教員を招聘すること、さらに、待遇面での改善をすすめること等が求められます。吉江尚子氏(東京大男女共同参画室長)は、採用増に合わせて全教員を対象としたオンライン研修を新たに実施するなど、全学的な意識改革の必要性を述べられていますが、これらはすべての教育現場にあてはまることなのです。