校長ブログ
海外にルーツをもつ子供の受け入れ
2023.01.11
グローバル教育
1月11日
海外にルーツをもつ子供たちの進学を巡る問題がクローズアップされています。入試を実施する全国の公立高校の約3,400校のうち、外国出身生徒向けの特別枠を設けているのは920校で全体の27%、つまり、7割以上の公立高校には枠がないということになります。(日経)また、枠があっても来日3年以内(27都道府県のうち13都県)とするところが多く、さらに、中学入学前に来日した子供の受け入れ先も厳しい状態となっています。
東京を例にとると、都立高校181校のうち、日本語、もしくは英語による面接・作文で選抜する「在京外国人生徒対象選抜」を取り入れているのは4%にあたる8校だけです。
日本語が得意でない生徒にとって一般入試は容易ではありません。文科省によれば、2020年度卒の中学生のうち、高校や専修学校に進まなかったのは1%未満ですが、日本語指導が必要と認定された生徒は10%。授業についていけず中退する場合もあり、2021年度の中退率は5.5%、全体(1.0%)との開きは大きなものとなっています。実際、中学卒業後に進学したのは約10%であり、全中学生の10倍の水準とのこと。昨年は、155人枠に対し、169人が応募し、138人が入学手続き
したそうです。(本校では、中高入試では自己アピール方式における英語重視型で実施、入学後も定期的に日本語指導を行うなど、すでに対応させていただいております)
専門家は、日常会話が身につくまで2年、教科書を理解できる水準の日本語力を身につけるまで5~7年、文科省は「外国人生徒が母語話者レベルに追いつくには少なくとも5年」と指摘しています。支援団体からは枠を来日3年以内に限るのは、言語習得の実態にそぐわないという声もあります。(すでに神奈川県は受験資格を6年以内に広げ、茨城県はすべての公立高校で枠を設け、定員を拡大しています)
小島祥美氏(東京外国語大学准教授)は、小中段階の日本語教育の格差は大きく、高校入試で思考力を評価する工夫が不可欠であること、加えて、グローバル人材の育成のチャンスを逃すこと自体、日本にとっての損失と述べられています。ちなみに、米国は高校までが義務教育であり、英語力にかかわらず進学できます。カナダやオーストラリアは中学校の成績証明書があれば英語力が不十分でも公立高に進めます。
高卒資格がなければ就労が制限されるという実態(外国人材の配偶者や子らが対象の在留資格「家族滞在」で働けるのは原則、週28時間以内。高卒なら就労制限がありません)、政府の高度・専門人材の受け入れ方針、コロナ禍における入国制限緩和に伴う受け入れ再拡大も見据えつつ、未来を築く子供たちのための公平な環境づくりを進めていきたいものです。