校長ブログ

都立高校入試でスピーキング

2023.01.05 教科研究
1月5日

 2022年の英語力の調査(EFエデュケーション・ファースト」によれば、111カ国・地域(英語を母語とする国は除く)のうち日本は80位であり、2011年以降、下降線をたどっています。受験者の年齢中央値は25歳、ドイツ(10位)など欧州が上位を占め、アジアでは韓国が36位、中国が62位となっています。

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 欧州評議会が2001年、語学力の指標となるCEFR(欧州言語共通参照枠)を英語教育の目標に取り入れましたが、以降、4技能のバランスのとれた英語教育に力を入れる国が増えました。

 日本でもスピーキングを重視、高校や大学入試に導入する学校が増加し始めました。東京都は都立高校の入試の合否判定に使うスピーキングテストを導入しました。模索中ではあるものの、今回の事例を見ながら、テスティングのあり方を精査していくことになりそうです。会場は都内197カ所、約69,000名が受験しています。試験時間は約15分間、タブレット端末に表示されたイラストの説明などが問われ、それに対して発話した音声を端末に録音するというもの。評価は6段階の20点満点で採点、2月に行われる学力検査と調査書の合計1000点満点で判定されます。

 英語4技能を測る従来の手法はリーディングとライティングが中心でした。大学入試センター試験でリスニングがスタートしたのが2006年からですが、今回の東京都の取り組みは大量の単語を暗記し、文法訳読式中心のの日本の英語教育に一石を投じるものです。 

 文科省の調査(2017)によると、高3で英検準2級以上の力がある生徒は、インプットであるリスニング(33.6%)やリーディング(33.5%)に対して、アウトプットであるライティング(19.7%)とスピーキング(12.9%)という割合になっています。

 グローバル化が進むビジネス業界では今や「使える」英語力は必須。TOEICを運営する国際ビジネスコミュニケーション協会の調査(2019)によれば、社員に不足している・強化したいスキルとして67%の企業・団体が「英語」を挙げています。

 今、英語4技能のバランスが重視され、高校や大学で話す力を問う入試が広がる可能性があります。大学入試の個別試験でスピーキングを課すところが出てきました。例えば、東京外国語大は2022年の入試で、イギリスの公的機関と開発したスピーキングテストを実施しています。また、東洋大は2017年から英語検定試験を得点換算する手法を導入しています。

 今回、都教委が実施したスピーキングテストについては、短期間に受験生全員の音声を正確に採点することはできないのではないかと懸念する声があるのもまた事実です。

 卯城祐司氏(筑波大教授)は、知識の習得が使える英語につながるとは限らず、話す力の到達度を測ることは不可欠と述べられています。また、試験の規模が大きいと採点のブレが生じやすく、丁寧な説明と十分な体制整備が求められることについても言及されています。