校長ブログ

進路選択

2022.12.02 大学進学研究
12月2日

 東大工学部が、中高生に学問や仕事の多様性に目を向けてもらうために、工学の魅力を伝える活動に取り組んでいます。 

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 染谷隆夫氏(東京大学工学部長)は、工学部のイメージとしては、シリコンバレー(米国)周辺では工学部の人気が高く、スタートアップ企業を生み出す人材が多く輩出されている一方、日本にはそのような動きはないと対比されています。

 そして、工学が面白いのは、先端の科学技術を駆使して絶えず変化する社会課題を解決するところと言われています。同氏は、全国約20の中高を訪問、特に女子に工学の面白さが十分に伝わっていないことに気づいたそうです。結果、「工学部のリアル」というイベントを開催、会場に約450人、オンラインで約850人の中高生を集め、工学部の学びや卒業後のキャリアを考える機会を提供されています。

 また、デジタル活用で最新の工学を学べる「メタバース工学部」も開催されるとか...。これは、価値観が多様な今、工学キャリアの情報を提供するのと同時に、中高生にオンラインで参加できる最先端のジュニア工学教育を行い、チームによる課題解決の模擬体験の場を設けるとのこと。また、社会人を対象としたリスキリング工学教育も設け、DX人材の増加に寄与するそうです。

 同氏は、東大工学部の女子学生の割合が11.7%であり、学部全体の20.1%を下回ることを指摘し、最終目標を50%前後とされています。同時に、DX化の推進には文系人材や地域に果たす役割が大きいとし、全国の生徒に工学部を選んでほしいと呼びかけています。

 高校現場を見渡すと、数学に対する苦手意識をもち、先端技術への興味・関心の薄い文系選択者が多いのもまた事実。テクノロジーの民主化が進むといわれる昨今、DX化は社会や組織を変容させ、若者に大きな舞台を用意する一方、自力でデータや先端技術を駆使し、課題解決する時代が到来したことを如実に物語っています。

 これまでの進路指導をふりかえると、大学で研究する専門分野がどれほど社会に役立つものになっているか十分に浸透しきれていない状態で高校を送り出してきた感があります。これからは、大学の情報発信の仕方や受験指導に偏った高校の進路指導の見直しも含め、意欲あるすべての人のために早い段階から学びの場を提供できる中高大の接続が求められます。

 今や誰もが努力によってチャンスをつかめる時代。価値観やライフスタイルの変容によってこれまでなら1つであった正解から最適解への探究が余儀なくされています。だからこそ、中高生諸君は、リアルな社会に目を向け、他者と協働して山積する課題を自分のこととして捉え、具体的な施策を実行する勇気をもっていただきたく思います。ドラスティックな社会変容が進む中、未来を切り開くチャレンジ精神を一人でも多くの人と共有したいものです。