校長ブログ

新コース立ち上げ特集㉚-物語の構造

2022.11.12 グローバル教育
11月12日

 物語構造の理解について、Rumelhart1975)は、記憶の中に蓄積された知識が意味を構成する際に推論を働かせると述べ、これを物語スキーマと呼んでいます。  

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 スキーマとは、物事の本質を捉えるための思考の枠組みのようなもの。(校長ブログ2022.7.2)その意味で、物語スキーマとは、物語の構造を捉えるための枠組みと言えます。Rumelhartは、物語の主要部分を状況(setting)とエピソード(episode)に分け、状況は登場人物の置かれた場面、時間等を示し、エピソードは出来事の発生、内的反応(internal response)、外的反応(external response)からなるとしています。

 歴史をひもとけば、2000年以上も前にアリストテレスが物語の分類を試みていますが、諸説様々、一致した見解には至っていません。

 バーモント大学コンピュテーショナル・ストーリー研究所が感情分析を用いて1,700以上のフィクション作品の感情値を計り、データマイニングを駆使することによって、感情曲線には6つの軌道があることを発見、それが物語の構成要素になると発表しています。

 6つの軌道とは、立身出世物語に見られるような感情値の「一定して継続的な上昇」型、『ロミオとジュリエット』のような「一定して継続的な下降」型に加え、「下降から上昇」型、「上昇から下降」型、「上昇⇒下降⇒上昇」型、「下降⇒上昇⇒下降」型に分類できるそうです。

 この検証は、主に英語のフィクション作品についてなされたもの。当然、言語や文化の違いや時代の変遷とともに感情値がどのように変化したのか、また、ノンフィクション作品の場合はどのような結果が生まれるのかなど、新たな疑問が生まれますが、物語研究に一石を投じたことは言うまでもありません。

 物語の構造については、登場人物、モチーフ、プロット、表現様式によるものなど、類型化による様々なアプローチがあります。日本では柳田國男の民話の分類が有名ですが、1960年代のレヴィ=ストロースによる神話の構造分析は、多様な作品も物語構造に注目すれば類似したものであるという認識をもたらしました。物語の本質と読書の心を引きつける力についての新知見を待ちたいと思います。