校長ブログ

中国の科学技術研究力

2022.11.04 トレンド情報
114

 科学技術の分野で、中国が躍進しています。文科省によれば、科学技術論文の量と質に関する3指標がすべてトップとなり、これは米国に並ぶ偉業です。

20220530-736.jpg

 グローバル化が進展する中、中国は独自の経済構造の確立をめざし、科学技術力によって成果を生み出してきました。例えば、安価な新型のペロブスカイト太陽電池でエネルギー変換効率を高め、脱炭素化に寄与したり、宇宙ステーション建設などの大型プロジェクトも手がけるといったこと等々...。

 躍進の背景にあるのは政府主導の資金援助と戦略的な人材育成に他なりません。2050年までの目標は「世界の科技強国」だそうです。その一助として、企業に売上高重視から研究開発強化へシフトするよう方向づけし、研究開発費は10年間で約2.5倍に増やしているとのこと。現在、研究開発費は米国が世界トップですが、そこに迫る勢いです。研究者数は200万人を超え、2位米国、3位日本。2025年までの5カ年計画では、AI、量子情報、半導体、脳科学、遺伝子・バイオテクノロジーなどの強化を掲げています。

 一方、日本は研究開発費や研究者数は3位であるものの、近年の伸びは鈍くなっています。例えば、博士号の取得者数で見ると、米国、韓国、中国は増加しているのに対し、日本は減少傾向です。日本は2021年から5カ年の「科学技術・イノベーション基本計画」を開始、若手研究者の待遇面での改善や10兆円の大学ファンドなどを進めています。

 若い研究者が育たないのはその人の能力の問題ではなく、システムの問題です。研究がすべてうまくいくとは限りませんが、科学は多くの人がチャレンジし、一見、成功しなかった取り組みも含めて全体として進歩するもの。大学が基礎的な研究をし、その成果を企業が選んで仕分けすることが不可欠です。米国では、企業の連合体が資金を集めて研究者に自由に研究させ、その成果から役立つものを選別する試みがなされています。基礎研究は、必ずしも国が支えるものではなく、社会全体が支えるという認識が必要ではないでしょうか。