校長ブログ

新コース立ち上げ特集㉕-和訳先渡し、中渡し

2022.10.08 グローバル教育
10月8日

「和訳先渡し」の授業とは、文字通り、授業でテキストを読む前に全訳を渡しておき、予習段階でそれらを活用、内容を把握した上で授業に臨ませる、一種の反転学習のようなものです。

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 この方式は、かつて授業の大半を占めていた文法訳読方式(grammar translation method)における時間の使い方を改良するために考案されたもの。和訳を否定しているのではありません。限られた授業時間を有効活用するために、極力、和訳作業を減らし、その分、語彙・概要のインプット、表現取り込みのインテイク(intake)、再生・表現のアウトプットを組み入れ、理解と定着に向けたディスカッションやディベートといった幅広い活動に発展させることを目的としています。

 実際の授業では、生徒は先渡しされた全文訳を参照しながら様々なタスクを消化することができるわけです。訳読にかける時間を削り、多くの英文にあたり、内容に重点を置いてコミュニカティブな活動を増加させることによって、4技能をバランスよく習得させようとする点は一定の評価につながっています。しかし、到達度の高い生徒とそうでない生徒の間に温度差、例えば、タスクを進める際、全文訳に頼りすぎるとインテイクが促進されないという点、また、文法事項が理解できているか把握しにくい点、母語の能力や知識を十分に活かすことができない点などの課題が指摘されています。

 他方、授業がある程度進み、全体の流れを理解した後に全文訳を配布する「和訳中渡し」の授業もあります。これも英文和訳にかける時間を短縮し、インテイクを促進する上では「和訳先渡し」の方式と共通しており、産み出された余剰時間を言語活動だけでなく、生徒の内発的動機を高める効果があると言えます。

 今回は2つの「和訳先渡し」を紹介しましたが大切なのはバランス。年間通してこのような取り組みばかりをしているわけではありません。扱うテキストの難易度、生徒の到達度によって集中度も変わってくるのは自明ですから、バリエーションを加味した授業を展開することが生徒個々のモチベーションを維持するのです。