校長ブログ

新コース立ち上げ特集㉓-和訳の必要性

2022.09.23 グローバル教育
9月23

 かつて英語の授業と言えば、文法を軸にしたテキストの内容理解と全訳が大半を占め、その手法は文法訳読方式(grammar-translation method)と揶揄されたものでした。しかし、近年では、英語の授業は英語で、つまり、生徒がなるべく英語を使える環境を提供することを目途にした授業に変容しつつあります。和訳といっても授業では文構造が複雑で日本語に訳しにくい、あるいはなじみのないテーマで多くの生徒が難しいと感じているところを確認する程度であり、部分的な和訳にとどめるのが通例になっています。

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 現場を見渡したとき、一文の意味はとれても、テキストが何を伝えようとしているのかよくわからない...と返答する生徒が多いのもまた事実。しかし、和訳ばかりに気を取られていると、記述されていることをイメージして捉え、全体像も把握することが苦手になってしまうことがあります。可能な限り、和訳に依存しないリーディングができるようになるには、語彙認知、背景知識にアクセスして意味を推測するスキーマ処理に加え、統語解析処理を自動化すること、つまり、文構造の分析力を強化し、英文を読み進めるうちに自然体で内容が想定できるようにすることが求められます。

 そこで重要となるのが教材選択。テキストが生徒の語彙サイズを超えると読解過程でワーキングメモリーを使い果たしてしまうため、難しいと感じるのは当然のことであり、全文和訳に頼ってしまいがちになります。教師が生徒の到達度に合わせたつもりでも″主役″である生徒からしてみれば難しく感じたり、また、その逆も起こり得るのです。

 様々な研究成果を調べると、生徒が「易しい」と思うテキストを使った方がリーディングやリスニングの力を向上させることが実証されています。Kern,R.Gは「第二言語のテキストを読む力がついてくると、テキストを理解しようとして訳に頼らなくなる」と言及していますが、いずれにせよ、易しい英文を大量に読む練習を重ねることが訳さなくても読めるようになるコツ。本校の英語教育では、様々な知見を踏まえて、できるだけ和訳に頼らず、読解ができるように指導していきたいと思います。