校長ブログ

部活動の地域移行

2022.09.14 カリキュラム・マネジメント
9月14

 スポーツ庁の有識者会議は、公立中学の部活動のあり方を検討し、休日の指導を民間に委託する「地域移行」を2023年から3年間で進める提言を公表しました。

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 少子化が進み、1校の部員数では大会参加が難しくなった学校が増加しただけでなく、教員の長時間労働の要因の一つになっていることを鑑み、当初は休日の指導から導入し、将来的には平日の指導も地域に委託する方向性です。

 OECD(経済協力開発機構)によると、日本の中学校の教員の勤務時間は加盟国・地域で最長の週56時間であり、部活動をはじめとする課外活動の平均指導時間が約4倍となっています。教科指導の準備や生徒指導、校務分掌など、教員としての主な校務に影響を及ぼしていることは言うまでもありません。

 若者がこのような労働状況を敬遠した結果、大学で教職課程を履修する学生は減り、自治体、私学ともに優秀な教員の確保に苦労しているのが現状です。その意味で、今回の方向性は働き方改革に寄与するだけでなく、産官学協働を推進し、「地域に開かれた学校づくり」に有益なものとなります。

 部活動の地域移行といってもその方法はいろいろ考えられます。例えば、地域にあるスポーツクラブとの提携や外部から指導員を招聘する方法、また、教員に報酬を払い指導を委託する方法等々...。(研究者が大学や公的研究機関、民間企業の間で、それぞれと雇用契約を結び、各機関の責任の下で業務を行うことできるクロスアポイントメント制度もヒントになるような気がします)

 同時に、"主役"である生徒たちがスポーツに親しむ機会を確保することを考えなくてはなりません。従来の部活動が学校の教員の"善意"によって運営されてきたのは紛れもない事実ですが、地域移行によって費用発生が予想され、経済的に困難な家庭への支援等も懸案事項になります。

 学校教育法には部活を規定する条文がなく、学習指導要領には「生徒の自主的、自発的な参加により行われる」とあるだけです。従って、行政の役割を定めた社会教育法において、部活動支援を明文化するなど、法規に基づく制度の見直しを検討すべき時期にきていると感じるのは私だけでしょうか?