校長ブログ
科学の素晴らしさ-ブラックホールの撮影
2022.09.07
トレンド情報
9月7日
ブラックホールの撮影に成功したというニュースが報道されたのは2019年。かつて、宇宙には無数の星の集まりである銀河が数千億あり、その中に巨大なブラックホールが実在すると考えられていました。間接的なエビデンスからその存在が認識されてはいたものの、目に見える形で捉えられたことはありませんでした。その意味で、本当の姿が明らかになったことにより、銀河の解明や現代物理学の検証につながることが期待されています。
ブラックホールとは、強い重力のため物質だけでなく、光さえのみ込む天体のこと。昔は崩壊した星を意味するコラプサー(collapsar)などと呼ばれていたそうです。
1916年、一般相対性理論に基づき、その存在が予測され、以降、多くの研究者がその解明に努めてきましたが、理論的な存在にしか過ぎなかったのです。しかし、1970年代に入り、X線天文学が発展したことで、マサチューセッツ工科大学を中心とするグループがX線観測衛星を継続的に観測、その存在を確かめました。その後、四つの天体がブラックホール候補に挙げられますが、その姿を捉えることはできませんでした。
1990年代には、銀河の中心部から放出される電波や中心付近の恒星運動の追跡に関する観測が行われ、直径1200光年の暗黒星雲の内側に円筒状の激しい物質の流れがあり、その中に球状のガスの塊、さらに内部にもう一つの暗黒星雲から中心に向けて3本のガスが流れ込んでいることが確認されました。
2011年、JAXAが地球から39億光年離れた銀河の中心にある巨大ブラックホールに星が吸い込まれる瞬間を世界で初めて観測したと発表、国立天文台とともに、世界で初めてブラックホールの位置を特定することに成功します。それまでなら直接的な観測を行うことができず、他の天体との相互作用を通じて間接的な観測が行われていたレベルからすると飛躍的な進歩です。
2019年、国際共同研究チームであるイベント・ホライズン・テレスコープが、地球上の8つの電波望遠鏡を連動させ、地球サイズの巨大望遠鏡を仮想的に実現、史上初となるブラックホールの直接撮影に成功します。撮影したのは銀河の中心にある巨大ブラックホールであり、直径は約1000億km、質量は太陽の約65億倍と推定されています。
イベント・ホライズン・テレスコープは、世界中の電波望遠鏡をつなぎ合わせて、圧倒的な感度と解像度を持つ地球サイズの仮想的な望遠鏡を作り上げるプロジェクトを実施。これは長年にわたる国際協力の賜物です。ITの進展に加え、このデータ解析法は、AIや通信、医療、様々な産業にも応用され始めています。