校長ブログ
大学入試が求めるもの
2022.09.01
大学進学研究
9月1日
いよいよスタートする大学入試を展望すると、全体の概況として、志願者数(既卒生)は減少するものの、合格者数(現役生)は増加する見込みです。大学・学部の新設と入学定員増に伴い、私立大を中心に受け皿が広がることが想定されています。その意味で積極的に挑戦させる進路指導になることは自明です。今回は保護者との対話からです。
保護者:大学入学共通テストの結果に伴う受験生の動向はいかがですか?
平井:共通テストの平均点が大幅ダウンしましたが、初志貫徹の傾向が見られました。国公立大学においては強気の出願が目立ち、過去5年で最高となっています。また、地方の国立大を中心に、募集定員に対してかなり多くの合格者を出す大学が見られ、この傾向は年々、上昇しています。私立大の競争緩和の影響だと思われます。国公立の前期は前年並でしたが、5年前と比べ、募集定員は変わらないのに志願者は1割近く減少しています。中期・後期は合格者が減少しましたが、これは後期を廃止した大学が増えたことなどが考えられます。
保護者:国公立と私立の棲み分けはあったのでしょうか?
平井:国公立・私学共に難関大志向。共通テストの難化に伴い、私大専願生の共通テスト離れが進んでいます。一部で地元志向が緩み、都市部への流れが戻っています。18歳人口は2%減、既卒生減少で、8万人を割り込み、私大は34大学で約2千人の定員増となるようです。
保護者:私大は入りにくくなっているのですか?
平井:全体の志願者は2021年度、大幅に減少しており、2020年以前の状況に戻っていません。首都圏、近畿圏ともに倍率はダウンしているため、競争緩和は一層進みます。大手予備校によれば、偏差値50~55の合格率を5ヵ年で比較するとかなり上がり、入りやすくなっているそうです。
保護者:コロナ禍における将来への見通しへの不安が資格人気につながっていると聞いていますが...
平井:英語資格・検定試験を必須で活用する方式で志願者が増加しています。
保護者:来年はどのような学部・学科に人気が集まりそうですか?
平井:現段階ではっきりしたことは言えませんが、学部系統別にみると、国公立・私学共に増加傾向は法・政治、経済・経営・商、農、医、薬であり、全体としてはほぼ横バイのようです。
保護者:大学入学共通テストの特徴について教えてください。
平井:大学入試センターによれば、大学入学共通テストの出題の意図について、知識の暗記だけで答えられる問題はできるだけ避け、資料等をその場で読み取り、思考し、独力で答を導くような作問を試みるということになっています。
保護者:量が増え、レベルが高くなっているのですか?
平井:教科によって多少の違いはあるものの、ページ数は増え、全体として資料や図が多用されています。これまで以上に思考力・判断力・表現力を問うという方向性の下、複数資料からの情報読み取りや日常のリアルなデータを題材にした設問が増加する中、成否を左右したのは情報処理能力と解答スピードです。情報検索読みを通じて、効率よく解答を導くことに習熟している受験生は高得点に結びつきます。年度によっては得点調整が行われてはいるものの、実際、易しい問題も多く、平均点は前年並というものもあります。
保護者:テストの妥当性、客観性、信頼性という点ではいかがですか?
平井:少子化によって大学が大衆化する中、多くの情報から取捨選択する力を測ることは、多様な学力層の基礎学力を把握する意味で重要とする見方がある一方、情報処理能力を測るだけなら適性検査型だけで十分であり、試験自体が教科・科目ごとの思考力を問うものになっていたかどうかさらに検証すべきという指摘もあります。テスト理論の専門家によっては、測りたい能力が明確にされていないとした上で、複数資料から得た情報を取捨選択させるやり方については一種の思考力を測るテストであると認めつつ、それが本当に測定したい力かどうか吟味することが不可欠と述べられています。
保護者:今後、見直しなど、どのような方向性で進んでいくのでしょうか?
平井:学習指導要領改訂に伴い、高校の授業改善を意識して作られたという大学入学共通テストは、2025年実施分から見直しが行われます。入試の大前提は大学が要求する学力を測ること。本末転倒にならぬよう、高大それぞれのメッセージを相互理解しながら「測りたい力」は何かを明確にしたテスティングを期待したいものです。
保護者:ありがとうございました。
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