校長ブログ

デジタル化の加速

2022.08.30 EdTech教育
8月30

 世界各国の高校におけるネット環境に関するOECDのアンケート調査(2018年)によれば、日本でデジタル端末がインターネット接続できる学校の割合は約37%でした。これはOECD加盟国の平均である約67%を大きく下回り、8割を超える米国や北欧諸国とはかなり差が出た結果です。また、ネット回線速度が十分な学校は、OECD加盟国の平均が約68%であるのに対し、日本は50%未満。さらに、公立約3万校の小中高のうち、無線LANが整っているのも50%未満でした。(文科省2020.3)これまでの日本のデジタル活用力が他国に比べて見劣りする背景には、校内ICT環境の整備が進まず、授業で実践を試み、指導力向上に資する土壌がなかったことが挙げられますが、Withコロナの時代、″遅れ″ が指摘されてきた日本の教育のデジタル化が動き出しました。

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 他国ではかなり早い段階から取り組みが進められています。米国は2016年に連邦教育省が教員研修や大学の教員養成課程でデジタル技術に関する活用指針を策定。フランスは2018年に教育のデジタル化を打ち出し、デジタル技能を自己診断できるサイトに教員専用ページを設けるなどの工夫をしています。OECD調査で3位であった韓国は、1999年に情報教育を推進する専門機関を設置、2017年度から小中学校で段階的にプログラミング教育を必修化し、20192月までに教員研修を実施するだけでなく、教員養成段階でもティーチング・メソッドを学ばせています。

 日本では新型コロナウイルス感染拡大に伴い、児童・生徒の ″学びを止めない″ 取り組みの一環として、政府はデジタル活用の遠隔授業などの能力を備えた小中高校の教員育成に乗り出す方向性を示しました。具体的には、授業でのICT活用法の提示とともに、関連企業から学校に最大9千人を派遣してもらい、指導力の底上げを急ぐとのこと。

 文科省は、2020年度からプログラミング教育を小中高で段階的に導入、ソフト作成などを学べるようにしました。教育のデジタル化に向け、小中学生に学習用端末を配る計画を2020年度末まで前倒しして、2024年度にはデジタル教科書の全国での導入を目指しています。同時に、2021年度を「学校現場のICT元年」と位置づけ、現在、授業での端末活用法を解説する動画をインターネットで公開を開始。さらに、ICT関連企業からの「GIGAスクールサポーター」を国公私立の小中高に派遣する費用を自治体に援助し、オンライン学習用の機器やソフトの使い方等を伝えるだけでなく、大学教員らによる「ICT活用教育アドバイザー」も派遣するバックアップ体制を整えています。

 コロナ禍において、日本の学校では、デジタル活用スキルを持つ教員が中心となり、校内研修等を行い、試行錯誤ではあるものの、オンラインと対面を組み合わせた授業を行うなどの取り組みを行ってきました。しかし、公立小中高校で双方向の遠隔指導をできた自治体は全体の15%しかありません。

 OECDの調査(2018)の調査によると、「デジタル端末を授業に取り入れるために必要な技術や指導力を持つ」と評価されている学校に通う15歳の生徒の割合は日本では30%未満であり、参加79カ国・地域で最下位です。克服すべき課題はありますが、DX化、グローバル化に対応する教育政策が展開されようとしているのです。