校長ブログ
科学の進歩
2022.08.20
トレンド情報
8月20日
世界最大の電波望遠鏡を造る国際共同プロジェクトが始動しています。プロジェクトの名称は「SKA(スクエア・キロメートル・アレイ)計画」であり、イギリス、オーストラリア、南アフリカを中心に事業計画が進められています。母体となる天文台は、従来の50倍超の受信感度を持ち、すべて合わせると面積が世界最大の1平方キロメートル程度になるのがネーミングの由来だとか...。電波望遠鏡は2期に分けて建設するそうです。完成すれば、銀河の進化や文明探査まで大規模な取り組みが可能になります。
上記の国に加えて、欧州各国、インド、中国なども非営利組織「SKA機構」を立ち上げて内容を検討しており、政府間で結んだ天文台条約が発効されました。日本の研究者もSKA計画には関心を寄せており、「日本SKA協会」を立ち上げています。
世界最高性能の電波望遠鏡と言われるのがアメリカの「JVLA」ですが、SKAの感度はその10倍、天体の識別能力を示す分解能も10倍となっており、従来、観測が難しかった宇宙の構造や銀河などをより正確に観測できるものとなっています。
SKAは地球外の知的生命体の探査を研究の一つにしています。太陽に近い1万個の星の中に文明が存在すると仮定した場合、SKAの感度があれば、空港レーダーで捉えることが可能になり、テレビ電波でも受信できるそうです。
また、星の材料となる水素原子が放つ電波を観測することで、宇宙誕生後の世界を探り、銀河の進化について解明することも期待されています。現在の理論では、宇宙が誕生した後にできた水素はイオン状態であり、冷却されて通常の水素となり、星ができ上がったとされています。
さらに、中性子星からの信号を調べることによって、一般相対性理論の検証やブラックホールの合体に伴う重力波の観察が可能になると考えられており、宇宙が誕生した直後に起きたとされる急膨張現象であるインフレーションの究明にもつながるとのこと。
SKA計画は、アフリカで初めての基礎科学分野での国際共同プロジェクトですが、各国の影響を及ぼすことは必至。国際天文学連合は、南アフリカに「社会発展のための天文学推進室」を作り、普及活動に力を入れるのと同時に、若手研究者の支援もしています。今後の成り行きに注目したいものです。