校長ブログ
これからの大学
2022.07.25
大学進学研究
7月25日
近年、大学経営において「エンゲージメント型」という言葉が使われるようになりました。日本語では「自発的な貢献意欲」や「愛着」などと訳されていますが、多様なステークホルダーが互いに貢献し合うことを意味します。コロナ禍とも相まって、今、大学のレゾン・デートル(存在意義)が見直されようとしているのです。
筑波大学の学長で、国立大学協会の会長を務める永田恭介氏は、置かれる状況は異なるものの、大学がそれぞれの特性を発揮するために、2022年度から始まる第4期中期目標に向けて、10~20年先を見据え、将来を見定めたビジョンを描き、具体的な方針を明確にする必要があると述べられています。同時に、コロナ禍によって、社会が激動し、予測不可能な時代にあって、その重要性は一層高まっているとも言及されています。
コロナ禍において、東京一極集中のデメリットが露呈された形になりました。しかし、これは地方創生によって、首都圏での機能を代替できる都市が分散していることを物語っているとも言えます。永田氏は、地域の研究・研究開発を担う国立大、特定分野で地元の人材需要に応えるのが公立大、独自の建学の理念を持つ私立大が同じプラットフォームで総合力を発揮すべきだと述べられています。同時に、社会の将来像を見据えて、定員規模についても要検討とされています。
法政大学の総長であった田中優子氏は、大学は、様々な活動を通じて、人と人が言葉はもちろん、五感すべてで情報をやりとりすることによって、自分を見つめ、育つ場とされています。そして、「学びのしくみ」を「人が成長する上で、他者と関わることがいかに大切か」とし、大学は学生が学びに関わる機会を積極的に作り出し、地方と都心、大学間で連携することが不可欠と述べられています。また、大学の定員管理の基準を入学定員から収容定員へ、学部単位から大学全体にシフトさせることで学ぶ期間を多様化することが必要とおっしゃっています。
日本の大学は、明治時代、日本が近代化の道を歩むにつれて、帝国大学がスタート、戦後、1県1大学の新制大学が誕生しました。現在、大学全体を見渡すと、学生の8割が私立大学に集中しており、私学が占めるウエートが大きくなっています。コロナ禍という危難を経て、今、まさに新たな大学の姿が模索されようとしていますが、底流にあるのは、学生が目標としたスキルを確実に身につけていると実感し、それを日常生活に応用できること。大学における人材戦略は中高のそれとも共通なのです。