校長ブログ
新コース立ち上げ特集⑫ースキーマ
2022.07.02
グローバル教育
7月2日
人間の長期記憶に蓄えられた過去の経験や出来事についての知識をスキーマと言います。スキーマという用語は、イギリスの認知心理学の先駆者の一人であるバートレットBartlett,F.C.(1932)という人によって用いられ、多くの研究者によって使われてきました。
バートレットは、人の記憶について研究し、物語の理解や記憶が読み手がすでにもっている知識に導かれて進行するとしました。つまり、スキーマに合う情報はスムーズに取り込まれ、スキーマに合わない情報は省略されたり、合理化されながら、それぞれの中で再構成されると考えたわけです。
例えば、giveという動詞なら「与える人」「受け取る人」「何を」という三つの情報が必要です。しかし、それは骨組みに過ぎず、「誰が、誰に、何を」が決まっているわけではありません。実際のコミュニケーションでは、相手から発せられた情報について、それぞれがもっている知識を駆使しながら理解を深め、内容理解に行きつくわけです。(スキーマ理論では情報の違いを「変数」と呼んでおり、それを埋める記憶の中にある情報を「デフォルト値」と呼んでいます)
認知心理学では、スキーマ以外にもスクリプト、フレーム、物語文法など、様々な理論が提唱されてきました。しかし、どれも与えられた情報を理解するために、長期記憶にある経験値を利用して情報を補完し、自分に落とし込めるようにするという点は共通です。例えば、スクリプトという用語で説明すると、「レストラン」とくれば、「入店」「注文」「食事」「店を出る」の四つの場面に想定し、それらをもとに次の行動プランを立てたり、記述されていない行動を補完し、次に起こる状況や行なわれるべき行動を予測できるといった具合です。
スキーマは、ある出来事に関して、まとまって記憶されている情報や知識ですから、扱っている情報よりも抽象的にそのデータの構造を表しているものということになります。課題としては、その範囲や性質が明確にされていない点、スキーマが活性化され、推論が生じるのはどのような条件であるのかが明らかにされていない点などが指摘されています。いずれにしても、コミュニケーションを進めていく中で、正確な相互理解に向けて長期記憶にある関連情報を最大限に活用しながら文脈論理を把握する力を養っていくことが肝要です。
本校では日頃の授業で背景知識を強化し、到達度に合わせて、興味をもって勉学に取り組める個別最適化学習(アダプティブ・ラーニング)を定着させることによって背景知識を強化し、論理的思考力を鍛え、課題発見・解決力を向上につなげていく所存です。