校長ブログ
AI時代の学問②
2022.07.13
トレンド情報
7月13日
AI に最適な手法を学習させ、望遠鏡で撮影した天体の画像を分類し、銀河を探る方法が大内正己氏(国立天文台、東京大学教授)らによって試みられました。約4,000万個の天体を巨大デジタルカメラ望遠鏡で撮影、4タイプ合わせて12万種類の天体モデルを設定し、各天体の種類を判定されています。
4タイプとは、太陽系が属する天の川銀河、普通の銀河、遠くにあっても明るく輝く銀河、近い宇宙に生まれたばかりの若い銀河のこと。ちなみに、銀河は約4億光年先にあり、推定数は千万歳、太陽天の川銀河やアンドロメダ銀河などは100億歳を超えているそうです。
宇宙の古い時代を研究するには、遠くの宇宙を見ればよいのですが、天体は遠くなるほど暗くなってしまいます。そのため、宇宙誕生から約5億年間の様子を従来の望遠鏡で観測することは難しく、古い銀河が宇宙初期にどのように進化していったかわかりませんでした。しかし、今回の研究を通じて、生まれたばかりの銀河から何かしら解明のヒントが得られるかもしれないという期待が寄せられています。
宇宙は約138億年前に誕生し、その後、小さな銀河が生まれ、それらが合体して大きな銀河に成長していったと言われています。実際、誕生から数千万年しか経っていない若い銀河はこれまでほとんど知られていなかったようです。銀河では最初の世代の星が年老いて爆発すると、その残骸から第2世代の星が生まれ、それが爆発して第3世代の星が生まれるというサイクルを繰り返しますが、若い銀河の特徴は規模が小さく、水素やヘリウムなどの軽い元素ばかりでできているということです。
これまでの研究では、宇宙誕生から約100億年後に生まれた銀河については、大型望遠鏡を使って本格的に観測しようとする取り組みがなされていなかったのが実態。しかし、世界最大級の「すばる望遠鏡」によって撮影された画像データベースでは、他の望遠鏡では捉えられない暗い天体が多数捉えられ、その中に生まれたての銀河が発見されました。AIを使って効率的に探索し、候補天体を絞り込むことに成功したことは、宇宙進化の過程を特徴づける上で重要な示唆となっています。学問の世界でもAI活用はもはやふつうの光景なのです。