校長ブログ

過去との対比

2022.06.30 トレンド情報
6月30日

 コロナ禍と生産性の関係がよく1920年代と対比されます。当時、工場の電化に伴い、大量生産が広がり、家電品が浸透して省力化に貢献したのは周知の通り。電気による生産性の飛躍的向上は、経済を一変させるほど日常生活に明確に現れました。

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 しかし、AIについてはその導入が小規模なためか、影響はあまり大きくないと考えられています。確かに、現代のAIにはそのような汎用性は見当たりません。例えば、モスバーガーでは、客と店員が接触しないようロボットがテーブルまで注文品を運ぶ実験が行われていますが、それは一部の分野だけ...。

 近年の科学技術の進歩は、大規模なデータベース構築と人間の行動の予測で占められています。これはディープラーニング(深層学習)というAIの限られた一分野への絞り込みがなされたためです。米国でさえ、機械学習を取り入れている企業は全体の3%未満と言われている現状から見れば、AIはいまだ成熟した技術とは言えないところがあります。

 オックスフォード大学ヘェローであるカール・プレイ氏は、水力紡績機と蒸気機関の発明が産業革命を決定づけたことを例示しつつ、コロナ禍におけるグローバルな人的交流とイノベーションの必要性を指摘されています。蒸気機関と言えば、ワットの名前が浮かびますが、実際、もっと早い段階でトーマス・ニューコメンが発明しているとのこと。それでもワットが発明者とされるのは、分離コンデンサー方式により初めて蒸気機関がエネルギー効率の良い動力源になったからだそうです。

 確かに、AIはデータが豊富な限られた分野では威力を発揮します。囲碁AIのアルファ碁が自己対局を重ねて強化されていったのがその事例。しかし、日常のありふれた事をロボットに教えるために何百万回と繰り返すわけにいきません。その意味で、AIのデータ効率を高めるイノベーションが必要なのです。

 コロナ禍では、感染拡大の可能性からグローバル人材の交流が制限されました。リモートワークにしても、技術開発は進んだものの、それ自身がイノベーションを鈍らせているという皮肉な見方もあるくらいです。生産性を高める取り組みが期待しにくくなっている以上、人材移動の障壁を減らし、巨大IT企業の技術的ビッグバンに加え、大学、スタートアップなどとも連携し、イノベーションを起こさなければならないのです。ソーシャルディスタンスをとらなければならない状況でのリモートによる協働以上に、リアルチームによる協働の方がイノベーションを創出する可能性が高いこともあるのです。