校長ブログ
充電切れなし?
2022.06.03
トレンド情報
6月3日
科学技術の発展はめざましいものがあります。携帯電話が「電話線なし」の通話を実現したのと同様に、近年、電気も無線によって「充電切れなし」を可能にすることが模索されています。
一例として、充電ケーブルを挿さなくても電子機器へ電気を送るワイヤレス(無線給電)の技術が挙げられます。完成すれば、スマートフォンから電気自動車、宇宙太陽光発電まで幅広く活用できます。ワイヤレスの技術は、充電ケーブルを必要とせず、アンテナのような装置から目には見えない電磁波を送ったり受け取ったりすることができるので、電気が切れる心配がなくなるわけです。
ノーベル物理学賞の受賞した天野浩氏(名古屋大学教授)は、電気エネルギーを自由にやりとりできる社会の実現をめざして、マイクロ波を使い、最大15メートルの距離から受電を見込む装置を開発することに成功。マイクロ波とは、電磁波の一種で人体への影響など、安全性の面でまだまだ検証が必要ですが、電子レンジの加熱からレーダーによる観測や全地球測位システムまで幅広く使われています。(法整備が完了した国はなく、活用の対象を絞り、国際標準化も見据えた制度化が進められています)
マイクロ波を使った送電は宇宙開発の分野での応用が期待されています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙空間に浮かべた太陽光パネルで発電した電気を地上に送電するシステム開発を推進しています。現在、空間に拡散するマイクロ波は距離が長いと電力を送りにくくなるため、地上までマイクロ波をどれだけ正確に送電できるかという課題があるものの、それに対してレーザーを使う方式が検討してされているとのこと。
無線給電にはコイル同士を近づけ、片方に電流を流すと磁界の作用でもう一方にも電流が流れるという現象を用いる「電磁誘導方式」があり、その規格化が進められています。同時に、離れた場所でも効率よく電気が送れ、磁界の振動が共鳴し合う「磁界共鳴方式」という仕組みを活用する研究も進められています。
藤本博志氏(東京大学准教授)は、「磁界共鳴方式」を走行中の電気自動車に応用して、95%以上の効率で給電できるシステムをブリヂストンなどと共同開発しています。「つながる車」(コネクテッドカー)の進展に伴い、ワイヤレス給電への期待は高まります。科学技術の分野で世界をリードする人材育成は教育界全体の課題なのです。