校長ブログ
PBL(課題解決型学習)
2022.06.24
教科研究
6月24日
今、多くの教育機関でPBL(課題解決型学習)が進められています。国内の大学を対象に実施した2019年度のアンケート調査(日経)によると、学長らが拡充を検討している分野で最も多いものがPBLとのこと。背景には、グローバル化やデジタル化が進む中、幅広い思考力や知識を身につけ、座学では得にくい学びを通じて、AI等を活用したスマート社会「ソサエティー5.0」の実現に貢献できるスキル向上があります。経団連と大学による産学協議会でも取り上げられています。
PBLは大学では今や常識。例えば、2020年度からPBLを3年次の必須としている横浜市立大学のデータサイエンス学部は、IT関連にとどまらず、製造業や小売業等に幅を拡げ、16社と提携。その中にはNECとAIを用いた課題解決やアイデアづくりに取り組むといった事例もあります。こういったチャレンジは、いろいろな大学から多くの学生が集まることで様々なアイデアが生まれるだけでなく、企業にとっても大学生と一緒に共同することが刺激になると考えられています。
関西大学は、大阪府吹田市と連携。PBL2年目の2019年度はスカイマークと連携し、受講生が考案した事業アイデアを検証する実験を神戸空港で実施しています。例えば、「搭乗前の待ち時間のストレス軽減」といった取り組みでは、機内での「耳抜き」などのお役立ち情報を掲載したポケットティッシュを配布、利用客の反応を調査しています。2020年度は水道事業の広報活動に加え、健康医療をテーマとした再開発に合わせた健康増進策や街づくりをテーマに掲げ、市への提案をまとめるそうです。
中央大学の商学部の学生は、PBL科目「ソーシャル・アントレプレナーシップ・チャレンジ」の一環として、新型コロナウイルスの影響で観光客が減り、余っている特産品と温泉入浴券のセット商品をSNSでPR 、数カ月で完売させ、特産品の在庫圧縮に貢献しています。また、学生がプロスポーツクラブの運営法などを学べるようにドイツのプロサッカークラブともパートナーシップを結んでいます。担当者の地域や現場の人と関わりながら、発想力や主体性を身につけられるというコメントには頷けます。
北海道大学はフィンランド発の課題解決プログラムである「デモーラ」を活用して産学連携を推進、企業が抱える問題解決や技術開発、ビジネスシーズ(種)の考案につなげています。デモーラとは、フィンランドの通信大手であるノキア出身者が中心となったプログラムであり、4~6人の学生チームが解決に取り組むというもの。欧州各国や中国、ネパールを含む18カ国、50以上の大学に広がっています。北海道内からも軽自動車、建設、介護保険事業の3社が参加。学生のアイデアを企業が事業化する場合はライセンス料を支払い、学生はプログラムの過程で企業と金額の交渉も経験するなど、ビジネスを肌で感じるメリットもあるようです。札幌市は「スタートアップ・エコシステム拠点都市」として選ばれており、起業を高めて地場産業の育成につながる可能性も秘めています。
いずれにせよ、産学協働は時代の要請。中高の段階でも「探究」学習はじめ、PBLのメリットを最大限に活かした教育実践を展開していきたいと思います。