校長ブログ
ニューノーマル(新常態)
2022.05.14
トレンド情報
5月14日
18世紀の産業革命は、ヒト・モノ・カネを都市に集中させる契機となり、20世紀になると郊外に住む人々が都市の高層建築物の中で働く米国型モデルを作り、経済成長のシンボルとなりました。しかし、21世紀は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界の様相が一変、これまでの都市成長モデルに歯止めをかけた格好になりました。いまだコロナ禍は収束の気配が見えませんが、人類は、病原体や治療法の研究に加え、感染防止のための社会・制度改革や予防措置を講じようと懸命な努力を続けています。
歴史をひもとけば、14世紀、ペストは欧州の人口を3分の1に減らし、約100年前に流行したスペイン風邪は約4,000万人もの尊い命を奪いました。ペスト禍体験の記憶は、後のルネサンスで "鎮魂"や "救済"を主題とした芸術に昇華、レオナルド・ダビンチらは、人口密集を防ぐ都市像を描いています。感染症という危難が訪れる度に、都市構造を見直し、人口分散の機運が様々な分野で高まっていったのです。
現在、世界人口の78億人のうち40億人以上が都市に暮らしています。国連のデータによれば、世界の人口100万人以上の都市は1970年代に150未満だったものの、2018年には500を超え、1千万人以上のメガシティーは30を超えています。その中で、在宅勤務の浸透により、金融やITをはじめとする多くの欧米企業が拠点分散を目途に賃借面積を縮小しています。一方、郊外にサテライトオフィスを新設することによって、電車や地下鉄など、公共交通機関による通勤で感染リスクを避ける配慮も試みられています。また、社内では自由に座席を選べるフリーアドレスを禁止するなど、感染防止に向けたオフィスのあり方が模索されているようです。
今やテクノロジーの発達で、情報を自由にやりとりできるデジタル時代。都市の存在意義が問われてくるのは自明です。狩猟、農耕、工業、情報という社会に続き、仮想空間と現実空間が融合した「第5の社会」を迎えつつある中、求められるのは知の集積に他なりせん。ソーシャルディスタンスの確保に重点を置きつつ、「安心・安全」を基調にしたニューノーマル(新常態)への対応を講じていかなければならないのは学校も同じです。