校長ブログ
偏食解消と科学
2022.04.27
トレンド情報
4月27日
食べ物に対する好き嫌いは、健全な精神を養っていく上でマイナス要因。野菜が嫌いな子供に、細かく刻んでジュースを作るなど、親の苦労は絶えませんが、今や科学がその"壁" を打ち破ろうとしています。人間の味覚は未だ解明されていないものの、素材の味に加え、科学によって食欲をかき立てる方法が編み出されようとしているのです。
大阪大学、マサチューセッツ工科大学(米)、サセックス大学(英)の国際チームが3種類のクッキーを試作、味を決めるのは「構造」とし、食と科学についての研究を進めています。カロリーは同じでも「構造」を変えるだけで満足感が増し、カロリーを減らしても美味しく感じられるとのこと。科学の進歩で社会が劇的に変化し、多忙な生活が食の選択肢を狭める時代、新しい食感や風味を創り出す取り組みは偏食解消に朗報となるだけでなく、健康研究への第一歩と言えます。
同チームは、イギリスの医学誌ランセットに論文を発表、195カ国(1990~2017)の情報を基に食習慣の乱れは、タバコよりも健康リスクが高いとしています。全粒穀物と果物の不足で計500万人が寿命を縮めており、食習慣を改善すれば5人に1人が救かるそうです。
メンバーの一人である豊田博紀氏(大阪大学准教授)は、好き嫌いは脳の学習と指摘されています。マウス実験を通じて、脳は体調が良くなった食べ物を覚え、嫌いになった味も経験を重ねると食べられるようになるという記憶の仕組みを究明、脳の調整法が分かれば好き嫌いの克服や食べ過ぎを防ぐ方法につながると述べられています。
全国3000人を対象とした農林水産省の調査では、主食・主菜・副菜が揃う献立を1日2回以上食べる日が「ほぼ毎日」と答えたのは56.1%。数値を見る限り、栄養摂取に時間をかけてもらうには科学の力が必要と考えるのも無理からぬことです。
食は経済や社会、文化など人々の生活を映し出す"鏡"。「完全栄養食」が注目される昨今、近い将来、オーダーメードによる錠剤を飲む食生活も考えらえますが、食が楽しみという人も多いのもまた事実。最高の食選びはまさに It depends on you.です。