校長ブログ
大人たちの努力①
2022.03.08
トレンド情報
3月8日
世界30ヵ国以上の100を超える研究チームが、新型コロナウイルスの予防や有効な治療薬の開発に向けて、高齢でなくても重症化した感染者の遺伝子を調べる国際プロジェクトを立ち上げています。ウイルスの原因が特定できず、個々の遺伝子の違いが感染症と関係していると指摘されています。これまでの研究成果としては、遺伝的な要因でインフルエンザ等にかかると重症化しやすい免疫不全症が確認されている他、エイズウイルスに耐性を持つ遺伝子も見つかっているため、遺伝的な要因が特定できれば治療薬を探したり、リスクの高低を見極めたりすることができるというわけです。
口火を切ったのがヘルシンキ大学(フィンランド)の研究グループでした。感染経路や重症化した感染者の遺伝子情報を集め、解析することをねらいとして、ツイッター等を通じて世界各国の研究者に協働が呼びかけられました。国際的なレベルで、データや解析方法を共有できれば研究の効率化につながるだけでなく、より多くの患者の命を救うことができます。感染者数が80万人を越える米国のコロンビア大学の研究チームも3,000人を超えるデータを収集する計画を立てているとか。発起人のヘルシンキ大のグループリーダーによれば、3カ月程度でウイルスの感受性に関わる要因を特定できる可能性があるそうです。
新型コロナウイルスが重症化しやすい症例としては、高齢者に加えて、糖尿病など、他の病気を抱える人に感染した場合は重症化するだけでなく、死亡に至る可能性があると報告されています。米国の疾病対策センター(CDC)によれば、国内の約4,200名の感染者のうち、集中治療室で治療を受けた患者の約12%が20~44歳にあたり、欧州でも同じようなケースが報告されているようです。
一方、健常者が重症化した症例に関する遺伝子情報を解析する国際プロジェクトも始まり、世界30以上の研究チームが参画、50歳以下で持病がなく重症化した患者の遺伝子情報を収集、解析しています。同時に、重症者と生活を共にしても感染せず、軽症だった近親者の遺伝子も調べてウイルスへの耐性要因を研究されているとのこと。あらゆる角度からの解析を加えることによってウイルスの正体をつきとめようとしているのです。
海外の研究チームは、日本の医療機関への協力も呼びかけ、世界の英知とIT技術を駆使して全ゲノム解析等で感染、重症化のしやすさ、ウイルスへの抵抗性に関わる遺伝子を見つけ、コロナ危機に立ち向かおうとしているのです。専門家集団がグローバルなレベルで、難題に取り組もうとしている実例です。
[参考]ゲノム配列の解析によって、新型コロナウイルスは「中国型」「欧州型」「米国型」等に分類でき、それぞれの地域で爆発的に感染が広がったことが突き止められています。一説によれば、中国・武漢から中国型のウイルスが拡散し、欧州で変異した欧州型が無症状の旅行者を通じて各国に広がったとのこと。中国から日本に入ったウイルスの封じ込めには成功していますが、欧州で流行しているウイルスが帰国者らを通じて流入し、対策が不十分なまま、都市部から全国に感染拡大したと考えられています。