校長ブログ

教育界を俯瞰して

2022.02.01 トレンド情報
2月1日

 今回は民間教育機関のS氏との新春対談からの1コマです。

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S氏:コロナ禍が続く中、高校では学習指導要領が改定され、大学入試改革も一定の方向で進み、教員免許更新制の廃止に伴い、教員の研修制度の在り方が見直され、私立大学のガバナンス改革案が出てくるなど、相変わらず教育界は話題豊富ですね。まずはコロナ禍での中高大の教育現場の状況からお伺いしてもよろしいでしょうか?

校長:本校では、文科省の指針に従い、感染症対策を徹底しながら中高共に4月から対面を中心とした教育活動を行ってきました。勿論、希望があればオンラインによる双方型授業も含めてです。「学校経営論」(教職課程)を教えている関西国際大学ではワクチン接種が進んだ秋学期以降、対面授業を増やし、学生がキャンパスで活動する機会が増え、活気が戻ってきました。ただし、私の場合、授業は山手キャンパスで行っていますので、三木キャンパスの学生はオンラインによる双方向型の授業参加としています。

S氏:人的交流の重要性を強調した文科省に呼応し、対面重視の方向性を打ち出した大学がある一方、利便性の高いオンライン授業を一部には残したいというところもあると聞いているのですが、中高の反応はいかがですか?

校長:オンライン学習において、双方向型の「同期型」にせよ、時間を調整して自学自習する「非同期型」にせよ、教師がファシリテーターとなり、それらを対面授業とうまく組み合わせて、生徒個々が自己調整学習する姿勢をつくることが重要であること、同時に、学力向上のポイントになるのが授業力に他ならないということを再確認した次第です。

S氏:その他、校長先生ご自身が教育界全体を見渡してどのような課題があると思われますか?

校長:全国的に不登校が増加の一途、通信制高校に通う生徒も増え続けています。感染症への不安から欠席した小中高生も約3万人いるとか。保護者の価値観が変容してきた以上、就学義務の緩和は要検討でしょう。学力への影響については、今年、実施される経年変化調査に注目したいと思います。併せて、児童養護施設出身者や日本語が母語でない生徒などへの配慮も必須です。

S氏:英語教育に話を移しますが、大学入学共通テストにおける「話す・書く」能力を測る民間試験導入については、経済的な格差や公正な採点という点で実現困難とされ、廃案となりました。これではいつまでたっても話せない、書けないままではないでしょうか?

校長:大学入試については、アドミッションポリシーに基づいて各大学に委ねられる方向に落ち着くでしょうね。しかし、EFエデュケーション・ファースト(スイス、2020年版調査)によると、日本人の英語力は5段階で下から2番目、「話す・書く」が課題だそうです。現実的には、現行の学校教育の中では、英語を流暢に話したり書いたりできるようにする指導は質・量の点で難しいでしょうから、いかに非同期型オンライン学習を活用して話し、書くを盛り込んだ環境づくりをするかではないでしょうか?

S氏:御校には多くのネイティブ教員がいらっしゃり、EdTech教材活用による個別最適化学習が推進されていますから十分な対応をされていると思いますが、全体的にはどのような方向になっていくと思われますか?

校長:英語教員の研修の在り方や外国語指導助手ALT(Assistant Language Teacher)の活用などが求められることになるでしょうね。同時に、大学の教職課程を見直し、海外留学を採り入れるなど、英語を学べる環境づくりが急務となることは必至です。

S氏:全国にALTはどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

校長:約2万人と聞いています。文科省によると、外国語の授業時間の4割以上でALTを活用しているは小学校で7割を超えていますが、中学校は3割、高校で1割に減っていくようです。

S氏:大学入試にスピーキングがないためですか?

校長:それもあるでしょうね。現場感覚として、大学進学を希望する生徒の夢を叶えることを優先するのは自明ですから入試に必要ないスピーキングを敬遠しがちになってしまうことは否めません。そのあたりの反省も含めて、ネイティブ教員を活用して4技能をバランスよく身につけさせる指導を工夫していくことになります。本校でも同じです。

S氏:コロナ禍が長引き、全体の活力が失われつつある中、人を育成する場である学校の役割が日本再興の礎と確信しています。デジタル化が進み、価値観が大きく変容する時代、今年の抱負をお願いします。 

校長:コロナ禍で、教育実践の方法も大きく変わり、教職員はデジタルの利点を認識しました。今や、時・空間のしばりがなくなり、世界中の様々な分野の人たちとディスカッションし、異なる視点を学べる環境が整いつつあります。本校ではさらに学びの可能性を広げ、教科横断的に背景知識を強化し、「知」を生み出す学校に変革していきたいと思います。

S氏:楽しみにしていますし、必ずやってくれると期待しております。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。