校長ブログ

新しい学びを考える

2022.01.18 トレンド情報
1月18

 コロナ危機によって世界は混乱、不安な気持ちになるのは当然であるし、皆、同じです。長い時間軸で捉えれば、人類は感染症との闘いを繰り返してきました。大切なのは、その度ごとに人は事態を冷静に受け止め、いかに危難を乗り越える努力をしてきたかを知ること。それが世界を広げる学びにつながるのです。そのためには、自らが正しく判断し、行動しなければなりません。今、世界各国がコロナと闘い、感染拡大防止に向けてどのような協力ができるか模索しています。

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 生徒諸君には、コロナ危機を契機に健康管理と医療体制を再考するのと同時に、これまでに学んだ知識を総動員して、新しい学びや生き方が見出せないか考えてみてほしいものです。例えば、感染拡大の「山」をなだらかにしてこれ以上、感染者を増やさないようにするにはピーク時と比較しながら "積分"すれば、人数が同じになり、結果的に、同じ数だけ感染者が出ても "微分" して「山」をなだらかにすれば、現在の医療体制で対応できるといった発想です。

 グローバル教育のあり方も問われています。比較・国際教育学を専門とする太田浩氏(一橋大学教授)は、新型ウイルスの感染が世界的に広がり、国際交流が事実上 停止に追い込まれている状況の中、この危機をチャンスと捉え、質を伴った遠隔教育を組み込む必要があると述べられています。これまでの日本の高校・大学は、政府の後押しもあり、グローバル化に対応すべく、短期・長期留学、語学研修、海外インターンシップと多様なプログラムを展開してきました。しかし、コロナ禍において事態は一変、留学中の学生の大半は帰国し、今後、予定されていた留学プログラムも中止せざるを得なくなっています。

 欧米では、コロナショック以前から、長距離移動に伴う高い旅費と航空機から排出される Co2 の環境への負荷が指摘され、問題視されていたそうです。今風に言うなら、いわゆる「3密」を回避し、ICTを活用したバーチャルな交流やオンライン(遠隔)会議にリセットすべきだという主張です。つまり、"内なる" 交流を具現化することによって、低コストで環境にやさしく、より多くの学生を取り込んだ教育実践が可能になるという主張に結びついています。

 今回のコロナショックを契機に、"新しい生活様式"づくりの一環として、渡航する意義や目的が問い直され、留学プログラムの再構築が求められるのは必至。例えば、校内と地域の資源を活用した低コストで全生徒を対象に実施できるプログラム、対面と遠隔でのコミュニケーションを融合したプログラムなどへのシフトが想定されます。留学制度についても、学びの成果がより高められるよう、期間を数週間とし、前後に遠隔共同授業を組み込むといったことが考えられます。歴史的事実を正確に捉え、教訓となる営みを刻むことが私たちの責務ではないでしょうか。