校長ブログ

学ぶことの本質

2022.01.11 教科研究
1月11日

 東京大学をはじめとする研究グループが、東京スカイツリーを使って物理学者アインシュタインが完成させた「一般相対性理論」を実証したという話題がありました。

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 20世紀前半までは、物理学の分野ではニュートンの「万有引力の法則」が主流であり、そのモデルは重力が質量を持つ物体間の引力の結果であるとされたのに対し、アインシュタインの「一般相対性理論」は質量間の観測される重力効果は時空のゆがみから生じたとする説。一般相対性理論は、重力波、重力レンズや重力時間膨張として知られる時間に対する影響など、重力の新たな効果を予測し、すでに実験、観測、重力波等を通して確認されています。また、ブラックホールの理解にも大いに役立ち、科学の発展に寄与したのは周知の通りです。

 この実験では、東京スカイツリーの上下2台の光格子時計の周波数の違いを測定することで重力赤方偏移を求め、一方でGNSS衛星や水準測量等によって標高差、さらに重力測定を行い、結果を比較することで一般相対性理論を検証。標高差の測定には、GNSS衛星が使用されているものの、衛星は電波妨害に弱く、なりすましの電波にだまされるリスクもあるのに対し、光格子時計による標高差の測定精度はこれを凌ぎ、数センチ程度の変動を検出できるというメリットがあるようです。

 一般相対性理論では、重力が強い地表では時間はゆっくり進み、重力の弱い高所では速く進みます。これまでの実験では、人工衛星やロケットに原子時計を積み込み、宇宙空間と地表の間の高低差を確保して測定していました。しかし、今回の実験では、持ち運びができるほどの大きさで、約100億年に1秒ずれるくらいの高精度、世界中で最も正確とされる光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台に設置し、約半年にわたって時計の進み方の違いを測定、展望台の方が1日あたり早く進んでいたことを確認したとのこと。

 光格子時計は物理実験だけでなく、時刻測定を伴う様々な用途にも活用できるようです。例えば、離れた場所に光格子時計を設置して光ファイバーで結んだネットワークを作れば、各地の標高差の変動をリアルタイムで捉えることができ、また、地震予測のための地殻変動や火山活動の前兆を捉えるのに役立つなどが考えられるそうです。

 大学で学ぶ"学問"を社会に役立つツールに変えること、これは"学ぶ"ことの本質につながります。我々がめざす教育成果の理想形です。