校長ブログ
魚種交代
2021.12.27
トレンド情報
12月27日
日本を取り巻く漁場では、数十年の周期で変化する「魚種交代」という現象が起きているそうです。1990年代、大衆魚の代表とも言われるマイワシからマアジとカタクチイワシへ魚種交代。2000年以降はマサバの漁獲量が増えつつあるとのこと。江戸時代の文献・資料や地層から出てくるイワシの鱗の調査からも人類が魚を乱獲する以前から海の資源が一定の期間で変動することがわかっています。魚種交替が起こる理由は諸説あるようですが、現在、海洋気候の変動という考え方が有力となっています。
日本では食料や肥料に使われてきたマイワシは1980年代に漁獲量のピークを迎えるものの、2000年代に激減しました。小魚の時はシラスと呼ばれ、成魚は煮干しとして使われてるカタクチイワシは、一時増加しましたが、今は減少傾向だそうです。
環境の変動による影響として、 アリューシャン低気圧やシベリア高気圧が強くなると海水温が下がり、エサとなるプランクトンが増えるため、親潮海流に生息するマイワシが増加します。一方、アリューシャン低気圧の勢力が弱くなるとエサが少なくなるためマイワシは減少しますが、黒潮で産卵するカタクチイワシが増加するといった事例が見られます。当然、生息が変わるとマイワシを食べるマサバとカタクチイワシを食べるマアジの漁獲量も変化します。
魚種交代は太平洋の東端でも起きており、カタクチイワシとマイワシの漁獲量に変動が見られるとのこと。今後、世界規模での魚種交代の実態把握と数十年単位での漁業管理が求められます。
秋の味覚であるサンマも近年、漁獲量が減っています。伊藤進一教授(東京大学)らは温暖化予測データを基に、2,100年におけるサンマの生息状況を想定。エサの量が減るため、エサを求めて太平洋北部の海域に長くとどまることになり、秋の漁期が冬にズレ込む可能性が高まると言及されています。
これらは気候の変動による食文化の変容を意味します。日本は海の幸に恵まれ、独自の食文化を生み出してきました。魚の生態研究、漁獲量管理など、課題は山積していますが、英知を結集して最適解を導く努力するのは現代に生きる我々の務めだと思います。