校長ブログ
グローバル化の課題
2021.12.14
大学進学研究
12月14日
現在、日本語に習熟していない来日外国人の子供にとって、大学の一般入試は対応が厳しく、留学生対象の試験も日本の高校卒業を受験資格と認めていない場合が多く、アゲインストとなっています。
国公立82大学を対象にした日本で学ぶ外国出身者に対する大学入試の有無を尋ねる調査(日経、2021.8.26)によれば、一般入試や留学生とは別枠で選抜方法を設けているのは、小論文や面接などによる入試を行っている宇都宮大学のみ。実際、75大学が留学生対象の入試を設けているものの、出身国の高校卒業、もしくは大学入学資格をもつ者に限定されおり、61大学が日本の高校を卒業する外国出身の受験生を認めていません。他の14大学は日本での修学期間が3年以内などと条件付きとなっています。
私立大学でも外国出身者への定員枠は限られています。国際社会学を専門とする村上一基氏(東洋大学准教授)は、大学の一般入試に合格するには日常会話だけでなく、日本語に関する高度な力がいることを述べられています。ちなみに、オーストラリアには、移民や難民の生徒対象の加点制度を設け、フィンランドには、難民の若者に対するフィンランド語の学習プログラムを実施しています。
52カ国の研究者による2020年版の「移民統合政策指数」を見ても、日本は33点、各国の平均を42点も下回っています。近年、海外からの人材受け入れが進められ、日本で出産、育児にあたるケースは増えていますが、文科省の調査では日本語が必要とされる児童・生徒は10年前の約1.5倍の5万人以上おり、さらなる増加が想定されているようです。
文化人類学者であり、エスニシティ研究や移民研究に造詣が深い竹沢泰子氏(京都大学教授)は、海外からの人材獲得に偏りがあり、多文化で育った若者の視点が新たな発想をもたらす可能性が高いにもかかわらず、日本に在住する外国出身者を育成する意識が乏しいことを指摘しています。海外からの高度人材の獲得をめざす昨今、グローバル化を進める上で外国出身者に大学進学への機会を提供する大学入試改革も必要です。グローバル化、DX化の中で、誰もがスキル・アップできるようなシステムの構築が急務。本校でも多様な人材を受け入れ、活躍できる環境づくりを模索していきたいと思います。