校長ブログ
理数系教科の貢献
2021.12.04
教科研究
12月4日
日頃、学校で学んでいる科目が応用され、社会貢献している例がたくさんあります。今回は、企業の発展における理数系教科の貢献について考えます。
青山学院大学の小林祐一朗助教をはじめとする研究チームが物理学を応用して企業の成長戦略に関する一定の法則発見を試みています。
内容は、従業員数と取引先数の比率が年代でどう変容しているか検討した結果、3対2の比率に近い企業が10~20年間に廃業する確率が半分以下というもの。3対2という比率は、一つの取引先に1.5人が必要ということになります。(1.5という数字は、ミロのビーナスや16世紀のモナ・リザにもあると言われる黄金比1.6を想起させます)
対象となる企業数は毎年平均で100万社超。仮説で終わる可能性はあるものの、たゆまぬ挑戦が新たな地平線を切り開こうとしているのもまた事実。取引先との関係を考えると、コミュニケーション量によって取引先が減ることもあり得ます。また、一つの取引先に充てる従業員が多すぎて全体の生産性が落ちることも考えられます。いずれにせよ、そのバランスをとる指標が過去の数字から割り出した比率3対2ということなのです。
武蔵野大学の武藤佳恭教授らは、企業のM&A(合併・買収)について数式化しています。対象は、約150社。方法は、交渉に入った各社の強みを補うと考えられる効果を数値で見積もり、互いの強みや弱みが重なったり、無駄になったりする影響を差し引くというものです。
企業の平均点は不成立の企業を上回り、結果、どの企業とM&Aをすればうまくいくか予測できることが可能になるとのこと。現実的には、M&Aが成功するためにはどれくらい上回ればよいかは未知数であり、同時に、新規事業を立ち上げたり、相手の事業や技術を十分に理解できていないケースでは数式が役立たないという限界はあるものの、期待のもてる研究であることは疑う余地がありません。
IT化や産業構造の転換の遅れなど、日本経済が低成長に陥って約30年。しかし、企業の飛躍が日本の成長を支えてきたことは史実です。生徒諸君には、さまざまな研究分野からのアプローチが社会貢献している点を学んでいただきたいものです。